トップにとって、自社や自社製品のプレゼンテーションは大切な役目の一つ。だが残念ながら、日本企業のトップの多くは、プレゼンが「上手くない」。国内外の多くのプレスカンファレンスに参加してきたジャーナリストに、“伝わる”プレゼンのポイントについて聞いた。

今年5月に開催されたNTTドコモ新製品発表会での一コマ。加藤薫社長が巻物に書かれたキャッチフレーズを手に、「誰もが覚えて帰る情景」を作り出した。
ジョブズがプレゼン名人だった理由
「プレゼンの達人」として一番に名前が挙がる企業トップといえば、やはり、故スティーブ・ジョブズだろう。筆者も、数え切れないくらいの回数にわたり、生で彼のプレゼンを聞いている。そして、いまだ彼が最高のプレゼン名人であることに異論はない。
ジョブズ氏はあまりにプレゼンがうまいことから「“現実湾曲フィールド”をもっている」とまで言われた。聴衆が彼のプレゼンに飲まれて、自らの意見を曲げて、彼の意見を採り入れてしまうからだ。冷静になると今ひとつ魅力に欠ける製品でも、彼のプレゼンにかかれば大傑作のように見える。
ジョブズ氏はカリスマだ。だが、プレゼンの上手さを支えていたのは、おそらく、その“カリスマ性”ではない。
秘密を明かす前に、別のプレゼン名人の話をしよう。その人物は、ソフトバンクの孫正義社長である。ジョブズ氏と違い、孫氏には「現実湾曲フィールド」はない。だが、彼がプレゼンを行うと、打ち出す施策には説得力が生まれる。そして何より、彼が「全力で事に当たろうとしている」と強く感じられるようになる。
両者の共通点はなんだろうか?それは「自分でプレゼン内容を吟味している」ということだ。
企業トップは忙しい。2時間にもおよぶ ...