機関投資家だけでなく、“ファン株主”を得たいという企業が増えています。本連載では、個人投資家向けに株式の評論を行う櫻井英明氏が、マーケットで選ばれるIRコミュニケーションの秘訣を読み解きます。

120周年記念IRミーティングの様子。「おもてなしの舞台」を意識し、香りにも気を使うなど、細やかな演出が光る。
先日あるJASDAQ上場企業のIR担当者から聞いた話だ。「BtoBの企業なのでIR業務を開始するのが遅く着手したのが2010年。そこから約3年経過しPBR(株価純資産倍率)は0.5倍から1.7倍まで上昇した」。この間アナリストカバレッジは0社から5社に増加。ミーティング数は述べ130回を越えたという。何のためにIRを行うのかという疑問に苛まれることも多いが、何もせず何も生まないより、活動することで企業認知度が高まり、企業価値が増大し、株主利益の創造につながることは間違いない。その延長線上には日本経済への寄与という壮大な動きがある。ここを忘れてはいけない。
同様にBtoBながら、このところIR活動が目立っているのが乃村工藝社。同社は明治25年創業で、その歴史は120年を超える。日本のディスプレイの歴史は乃村工藝社の歴史と言っても過言ではない。同社の業務は、商業施設などの集客空間の創造。人々が集う空間で来場者をワクワクさせたり、感動させたりするのが業務だ。集客をテーマにして百貨店、大型商業施設、企業PR施設、展示会イベント、博物館などのデザイン・設計、制作・施工から運営・メンテナンスまでも手掛けている。総合ディスプレイ業としての総合力を発揮し、業界シェアはナンバーワン。業界内では知名度は高いものの、株式市場ではそこまでではない。このギャップの改善に日夜取り組んでいるのが最近の同社である。
2012年、六本木で同社のIRミーティングが創業120周年記念イベントの一環として開催された ...