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「The Walking Dead Blood Store」の店内。献血により、公式グッズを入手できる。
今年も夏がやってきますね。夏といえばホラー。ホラーといえばゾンビ……ということで、(早く本題に入りたいがために)けっこう強引ですが、今回はポルトガルから「ゾンビと社会貢献」という意外な組み合わせの最新PR成功例をご紹介しよう。コラボレーションしたのは、FOXのホラーテレビドラマ「ウォーキング・デッド」と、ポルトガルの行政機関であるIPST(国立血液バンク協会)だ。
「ウォーキング・デッド」は2010年の放送開始以来、世界的に大人気。今回は「シーズン4」の開始にあたり、これまでにない斬新なPRが求められていた。一方、IPSTの悩みは年々減少する献血者。とくに若年層に歯止めがかからないのは世界的な傾向だ。日本でも、この10年で10代、20代の献血者は3割以上も落ち込んでおり、2027年には需要がピークを迎え血液の不足量が100万人分を超えるという予測もある(日本赤十字社推計)。IPSTとしては、なんとか献血への関心を取り戻し、「新規献血者」を獲得するPRを模索していた。
ホラードラマと行政機関。一見何の関係もない両者だが、ひとつだけ共通点するものがある。そう、「血」だ。これがホントの「血縁」関係(笑)……と言ったかどうかは知らないが、FOXとIPSTが意気投合して立ち上げたのが、「The Walking Dead Blood Store」─世界初の「あなたの『血』でショッピングができる店」だ。リスボン近郊にあるポルトガル最大のショッピングセンター、「ショッピング・ドルチェ・ヴィータ・テージョ」内に期間限定でオープンさせたものだ。
「ウォーキング・デッド」の世界を再現した店内は、今にもゾンビが飛び出してきそう。壁には血しぶきがペイントされ、ドラマに登場する廃墟のようだ。そこで売られているのは、Tシャツ、ポスターなど、ウォーキング・デッドファン垂涎の公式グッズの数々。お気に入りの品を選んでレジに並べば、店員さんは微笑んで、「22ユーロになります!」……ではなく、「1200mlになります!」─そう、この店ではあなたの「血」が通貨なのだ。レアなグッズが欲しければ、新鮮な血を献血せよ、というわけだ。
これが大成功。献血量は前年対比で571%も向上。さらにそのうちの実に67%が、初めて献血したという「新規顧客」だった。「ウォーキング・デッド シーズン4」の視聴率も、シーズン3に比べて17%向上し、まさに両者にとってウィンウィンな成果となった。マンネリになりがちなエンターテインメントコンテンツのPRと、マジメになりがちな社会活動PR。これを補完しつつ、「体験型」PRに仕立てたのが成功の要因だ。しかし、果たして貧血で倒れた熱烈なファンはいなかったのだろうか……また来月!
『ウォーキング・デッド』シーズン4 FOXチャンネルにて8月19日(火)24時~再放送スタート(月曜~金曜24時)
『ウォーキング・デッド』シーズン5 今秋放送予定
本田哲也( ほんだ・てつや)ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長/米フライシュマン・ヒラード上級副社長兼シニアパートナー/戦略PRプランナー。1970年生まれ。主な著書に「戦略PR」「ソーシャルインフルエンス」(ともにアスキー新書)など。フライシュマン・ヒラードは世界中に100拠点以上を持つ大手PR会社。 |