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『メディア露出への固執』が原因?広がる「成功報酬型PR」の仕組み

レポート

あいまいな点が多い「成功報酬型」PR活動。メディア露出にこだわるがあまり、広がりを見せている。

あるPR会社の日常(2)
シーンから読み解く、「成功報酬型PR」の仕組み

PR会社社員A「広告換算値5000万円を目標に据えられたU社の案件、ちょっと鳴かず飛ばずで厳しいなぁ......。ひとつ、情報番組の〇〇〇が興味を示してくれているんだけれど」。

社員B「〇〇〇と言えば、取材協力費の枠があったんじゃない?早く仕込んで決めちゃえば?」

社員A「うーん、そうなんだけれど......、私はやっぱり何だか抵抗があるんだよね。U社はむしろ、協力費も支払うからと乗り気なんだけれど......。何だか全然達成感もないし、むしろ後味の悪さだけが残るというか」。

社員B「それは分かるよ......。でも、そうも言ってられない状況も多いしね......。テレビだったら成功報酬型で提案してみたら?成功したら、その分の報酬をプラスオンして払ってもらえるようにすると、今進行している活動分に追加して払ってもらえる可能性もあるよ」。

社員A「何だか釈然としないけれど、今回は支払うか。間に入っている制作会社のMさん経由で頼めば、話を聞いてくれやすいかも。そうと決まれば、すぐに枠を押さえなければ!」

社員B「Mさんなら、仮で押さえておいてくれるんじゃない?この間もN社の案件でお願いしたんだけれど、すごく喜んでいたよ。今、テレビ局の経費削減で大変みたい。恐らくお金が出るなら、いろいろと相談に乗ってくれそうだよ」。

社員A「成功報酬はいくらとしてU社に出そうかなぁ......。Mさんに払う協力費が120万円だから、200万円で出そうか」。

社員B「“出精値引き”分を30万円くらいプラスオンしておいた方が、納得感が出るんじゃない?」

社員A「そうだね、じゃあそれで提案してみる。そういえば、I社の案件は成功報酬型でかなり儲かったらしいね」。

社員B「そうなの。早い段階で新聞に取り上げてもらったから、これなら切り口次第でテレビに持って行っても面白がってもらえるかもと思って。新聞に出た時点で成功報酬型のテレビPRをI社に提案して、すぐに対象番組が決まったから早かったわ」。

社員A「対象番組ってどこ?」

社員B「〇〇〇と〇〇〇も入ってたし、Mさんの制作会社が入っているところが3つあったから話が早かったわ」。

社員A「それなら手堅いよね。この間、リサーチャーのKさんに会ったら、〇〇さんも協力費で動くようになったらしいよ。複雑そうだったけれど......」。

社員B「Kさんも大変なんだね......。あの番組なら、この間H社の案件で300万円の成功報酬が支払われたみたいだよ。協力費は150万円だから、うちが丸々150万円を受け取れたらしい」。

社員A「それはすごいね。H社は成功報酬型で発注するのが初めてだったのかな?よくそこまで支払ってくれたね」。

社員B「何か今回は絶対に大型露出を決めなくちゃいけない、肝いりの商品だったんだって」。

社員A「でも、成功報酬型って、相手が興味を示していて露出の可能性が高い場合じゃないと提案しづらいよね。活動費が支払われない中で、ゼロベースから地道なアプローチを重ねていって、結局どこにも紹介されなかったとなると、無料で活動することになるし......」。

社員B「何かしら露出されるという確信めいたものがないと、あえて提案する内容ではないよね。何か私たちの仕事って、もはやPRじゃないよね......。こんなにメディアや企業側の事情が左右するなんて、PR会社に入るまで知らなかった」。

社員A「本当にそうだよ。何だか最近、テレビを観ていても無意識のうちに“これって裏でコストが発生してないか?”と勘ぐってしまうんだよね。PRの面白さは、そんなところじゃないと思うんだけどな......」。

「活動の成果」へのこだわり

PR会社による、テレビ番組を対象としたPR活動の形態で多く見られるのが、「成功報酬型」というもの。基本的に、成功報酬型のPR活動をスタートする前には、あらかじめクライアント側と対象番組について刷り合わせしておき、該当番組でオンエアが成功した時点でクライアント側がPR会社に金額を支払うというスタイルだ。成功報酬としての金額は、およそ100~300万円。「取材協力費」同様、時間帯や視聴率などによって番組ごとの金額が変わる。

ちなみにPR会社への取材によると、ここで企業がPR会社に「成功報酬」として支払ったお金が全額PR会社に入るケースは比較的少ない。と言うのも、成功報酬型のPR活動には、事前に「取材協力費」が存在することが多いからだ。実際に番組が放送される間には、リサーチ会社や制作会社などいろいろなプレーヤーが介在しているが、これらのプレーヤーとPR会社との間での、「露出担保=クライアント側から報酬を得る」ために必要なコストとして交わされるケースが多いという。

支払名目は「撮影協力費」や「制作協力費」などから、番組DVDのまとめ買いやウェブサイトなどへの広告出稿と引き換えにされるような場合までさまざま。一気に100万円単位が動くこともあれば、取材に必要な経費のみを受け取るケースもある。あくまで「広告費」ではなく、「協力費」として安価に取引されているという点もポイントだ。「テレビ局の予算削減で制作会社らも煽りを食っており、局以外からの収入が必要になっているという実態も。当然ながら彼らも番組のネタ出しをしていて、ネタ選定の決定権があることも。また、取材には制作会社が行くことが多いので、現場で何を撮るかという決定権は制作会社にあるということも」(PR会社社員)。

一方、成功報酬型のPR活動はその内訳があいまいな点が非常に多いということも事実。通常のPR活動のように「活動費」ありきで番組に働きかけるわけではないため、PR会社の責任は発生しない。

また、PR活動の進捗について報告する義務もないため、「どの番組での露出可能性が高いか」という状況をクライアントが把握しきれないという面もある。これはある種PR会社にとっては好都合という面もあり、たまたま成功報酬の対象番組で放映された場合なども、「アプローチしていた成果」として成功報酬を受け取ることができることも。この辺りはモラルが問われるところだが、「アプローチをまだスタートしていない状況で露出されたならばクライアント側に正直に伝えるが、“プレスリリースを送っただけ”というレベルでも、何らかの働きかけを行っていたならば、基本的には“成功報酬”として受け取る」(PR会社社員)との声も聞かれ、「成功」の判断は難しい。

最終的に求められるのはメディアの自己規律という見方もあるが、メディアに働きかける側の視点から見ると、こうした動きの背景には、広報活動の成果がやはり“メディア露出”で測られるという点が起因している。たとえニュースバリューが低いネタであっても、PR会社に露出を強く要請する企業側の動きもある中で、受託する側としては“目に見える活動の成果”として、藁にもすがる思いでこうした動きにのまれてしまうというケースも少なくない。

もちろん三者の利害関係は一致しており、ビジネスとしては十分に成り立っている。また広報にとっては、メディアもPR会社も、日々の活動に密接に関わる重要な関係にある。しかし、ニュースの裏にあるそのような関係性が世の中にひとたび出てしまったら、どんな事態が起こるのか。水面下の動きでいられるのも、今のうちだけかもしれない。三者がどういった関係性の中で動くべきか、あらためて問われている。

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