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「強い」広報チームをつくる方法

背景には企業の強い要請も――「取材協力費」はなぜ発生するのか

レポート

「メディアに報じられたい」企業、「クライアントの要求に応えたい」PR会社、「ネタを探している」メディア。協力関係にある三者の課題を解決すべく、広報の域を超えた手法も広がっている今。その関係性が問われている。

メディア露出を“成果”としてPR会社に強く求める企業は多く、協力費枠に頼らざるを得ないという実情も。

あるPR会社の日常(1)
シーンから読み解く、「取材協力費」の仕組み

PR会社社員A「E社の新商品ネタ、ニュース番組「〇〇〇」でお願いしたよ。E社も喜んでいるし、あの露出で200万円なら安いものだよ」。

社員B「プライムタイムのAランク番組じゃないの。よくねじ込めたわね。この間、O社の強い意向で持ち込んだ時には、今月はもう枠が埋まっているとディレクターに断られたわ」。

社員A「やっぱりそれなりにネタを選んでいて、お金を払いさえすればOKというわけではないではないようだよ。テレビ番組に取り上げてもらうハードルはまだまだ高く、お金を払っても確実に取材してもらえるわけではないからな。今回は、まだ公になっていない隠し玉の情報をプラスするという条件で、通常250万円のところを50万円値引きしてもらったんだ」。

社員B「ニュース番組だと、他に出ていない情報を求められることが多いよね。むしろ最初の頃はニュース番組もお金で動く枠があるんだ、と驚きだったけれど......。でも50万円値下げとは、よほどニュース性のあるネタだったの?」

社員A「うーん、実はニュースバリューで言うと、それほどのネタでもなかったけれど......。たぶんたまたま、あの枠のネタがなかったタイミングで、他からも持ち込み案件が重なってなかったんじゃないかな。ラッキーだったと思うよ」。

社員B「そうなんだ。けっこうあの番組も大変なんだね......。持ち込み案件の混み具合のタイミングにも、けっこう左右されるよね。大手の広告会社とかは、持ち込みタイミングやネタの切り口が重ならないように、担当同士で調整しているとか......。うちも費用がつく持ち込み案件が増えてきたから、協力費案件の状況もタイムリーに共有し合った方が良いかもね」。

社員A「そうだね、今度の全社会議で議題に上げよう。ところで、O社は何のネタで、どのメディアに出したがっているの?」

社員B「とにかくテレビに出したいって言われているけれど、番組からはお金を払うと言ってもNGと言われているから難しいかな。どう考えてもニュースバリューが低いのに、“何とかしてテレビ露出を決めろ”ってそればかり......。協力費も払っても良いとは言っているんだけれど......」。

社員A「バラエティ番組はどう?深夜放送だからランク的にはCランクだけれど、最近新商品ネタも扱うようになってきているし、ディレクターの人も話を聞いてくれやすい人だから」。

社員B「ぜひ!良かった......これで決まれば、少しは落ち着いてくれるかも」。

社員A「オッケー!じゃあ、ちょっと聞いてみるわ」。

背景には企業の強い要請も

一見、地道に積み重ねてきた広報活動が結実したように見える例――。「これぞPRの力!」と言わしめた施策も、実はそうではなかった......ということは、今のPR業界の中で少なくない。注目を集めた話題の裏側には、通常のパブリシティ活動では発生しないはずのコストが存在するケースが横行している。

ここで発生するコストとは、業界内で「取材協力費」と呼ばれるもの。通常であれば、広報活動には金銭は介在せず、記者や制作側が取材するに値すると判断したものが実際に報じられるのは周知の通り。だが実情として、取材協力費という名目の金銭を対価に、メディアに取り上げてもらう事例が広がっており、「ステマ」と呼ばれるような動きが暗黙の了解の中で取り交わされているケースが少なくないのだ。

とあるPR会社のホームページには、取材協力費についての説明欄にこうある。「メディアに取材してもらったりする際、取材・編集などかかる費用を企業が負担する料金のことをいいます。(中略)昨今のメディアは製作予算が限られているため、取材協力費を支払うことができれば、メディアとのコネクションを強化できます」――。ここで言う“コネ”が、PRの域を超えたものであることは想像するにたやすい。

取材過程で入手した「料金表」を見ると、各テレビ局の情報番組やバラエティの番組名と時間帯、放映される系列局などの数が書き込まれており、その横には協力費として「150万円」「200万円」などの金額が記されている。そればかりか、“パッケージプラン”として「ウェブメディア露出→スポーツ紙〇〇枠→情報番組 新聞読み上げコーナー」と、1つの案件(切り口)でウェブ、スポーツ紙、テレビの3カテゴリのメディアに渡って“メディア露出の連鎖”を確約するというパッケージまで存在する。ここまで来ると、一連のメディア報道からなる盛り上がりは、PRというより「広告出稿」のようなものとも言えなくはない。

「情報番組やスポーツ紙、ウェブメディアは、取材協力費で割と安価に枠を手に入れることができる」と話すのは、PR会社社員。事実、協力費を支払えば露出が確約されるという「枠」は、先述のような広告会社やPR会社の中で「料金表」として出回っており、視聴率や部数などを加味しランク別に一覧になった資料が存在するという。

「通常のタイアップ料金よりも安価に、純粋な“メディア露出”として見られるため、活用しているケースは増えているという感覚です。(協力費の存在については)企業サイドに対してまだそこまで“公の施策”にはなっておらず、代理店を経由する中で発生するケースがほとんど。ただ、今風の広報に慣れている大手企業の広報担当者らは、こういった協力費ありきの露出があることを知っている人も実際にいる。そうした場合、最初から“押さえとしてこの番組は入れておきたいから、協力費を支払う”と決めて出てくるケースも。あまりこういった例が一般化されると、PR会社の存在意義もなくなってしまうので、どこかで線引きすべきとは思いながら、むしろ協力費枠も案件も増えている印象ですね......。けれど、メディア露出を“成果”として強く求めるクライアントは多く、正直、協力費枠に頼らざるを得ないところもあります」。

昨今のメディア環境の変化も起因し、PRのあり方にグレーゾーンが広がっているが、何にせよ結果として情報発信においてコストが発生すれば「広告」と同じ扱いにはならないだろうか。「情報の受け手である視聴者や読者が疑問を感じなければ良い」という声もあるが、その発信主体は企業である。消費者からの「ステマ」というものへの強い風当たりを考えると、一歩間違えれば社会問題となる危険性をはらんでいるのではないだろうか。

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