テレビや一般紙と専門メディア、そのターゲットは大きく異なるため、当然広報が渡すべき情報の質は変わる。また、ベテラン記者の多い専門メディアと付き合う際、各社広報が心掛けていることや注意点、具体的な手法を聞いた。

専門紙のみに送るリリースも
業界を盛り上げる目的を持つ専門紙。エステーは、業界として画期的な新しい技術や取り組み、業界全体が注目を浴びるきっかけになりそうな出来事は、一般メディアではなく専門紙にのみリリースを出している。
ターゲットに合わせて
まず大前提となるのは、それぞれの媒体の読者ターゲットが大きく異なることだ。専門メディアの読者は、小売や卸などの流通関係者や同業他社、それに対して一般メディアはより幅広いステークホルダーが読者。それぞれに合うようなアプローチをしなければならない。
エステーの中村広報部長は、「読者に有益、あるいは業界が盛り上がるような情報を伝えるように意識している」と話す。「業界を一緒に盛り上げようという意識が強いので、業界として画期的な新しい技術や取り組み、業界全体が注目を浴びるきっかけになりそうな出来事などは掲載されやすい傾向にあります。たとえば、当社は先日、経済産業省主催『ダイバーシティ経営企業100選』に選定されましたが、これは業界にとっても喜ばしいことですから、すぐにお知らせしました」。同社では、案件によって一般紙と専門紙向けのリリースの書き分けもしているという。また別の担当者は、同じリリースを配信した後でも、専門メディアの記者、一般メディアの記者それぞれに説明するようにしており、その際に提供する情報の質は異なるという。
曙ブレーキ工業の新井広報室長も、その提供すべき情報の質は異なると指摘する。「一般紙の自動車担当は各社数人ほどで他の産業も見ています。物理的に自動車産業に目を向ける時間は限られますし、その視点も社会全体や経済全体を見た時にその情報が与えるインパクトがどのようなものかというもので、産業一つひとつはそのパーツという考え。対して、専門メディアが求めるのは表面的ではなく、深くて早い情報。質・量ともに求められます」。