多くの企業で入社式が開かれる4月1日。新入社員に向けたトップの訓示が報道されるのは年度始めの恒例行事だ。経営トップの話のうち、報道されるのはほんの一部だが、その内容はよく練られたものばかり。日本企業の復活は果たして本物なのか。経済情勢や企業の状況が凝縮された入社式のメッセージを読み解く。
大阪市内の本社で開かれたシャープの入社式。100年を超える同社の歴史で初めて報道関係者に公開した。髙橋興三社長や役員の人となりを見せることを重視し、対話型の式を演出した。
年度はじめの大仕事
入社式で社長や会長が新入社員に向けたメッセージを送るのは、日本企業ではお馴染みの光景だ。このスピーチ原稿は広報や経営企画などの部門が作成するケースが多いだろう。さらに大手企業では、メディアを招いて入社式を開くところも多い。入社式は事前準備も含め、広報にとっては年度始めの大仕事と言える。
厚生労働省によると、今春の新入社員は大卒者や高卒者らを含め約71万人(2月時点)。景気の動向や足元の企業業績などに加え、昨今の新入社員気質などとともに報道されるのは今や春の風物詩。日本生産性本部が毎年発表する「今年の新入社員のタイプ」を見ると、安全運転で安心感はあるが、どこか馬力不足の「自動ブレーキ型」だそう。
入社式を広報機会ととらえ、積極的にアピールする企業は少なくない。整備場で行う航空大手の入社式などはその一例。フジテレビジョンのように、タレントがゲストで出席するようなケースもある。パフォーマンスもさることながら、メディアの関心はトップの「訓示」にある。ほとんどの入社式の報道はトップの言葉を伝えることが目的だ。