日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

元「TVキャスター&内閣広報室審議官」が読み解く、あの危機の広報対応

幻の首相メッセージ「国難の中で新年度を迎えて」

下村健一(慶應義塾大学特別招聘教授)

危機が発生したとき、その後の広報対応によって世の中に与える印象は大きく変わる。本連載では、ある時はメディアの立場で多くの危機を取材し、またある時は激動の時代の内閣広報室で危機対応を行った経験を持つ下村健一氏が、実際にあった危機の広報対応について説く。

また新しい年度が始まった。この機に組織のトップのメッセージを社内広報することは、構成員を鼓舞する大切なツール。特に、組織が疲弊している危機下であれば、尚のことだ。

実は3年前の4月1日に、そんな社内広報効果を今こそ生かそうという働きかけが、首相官邸で非公式に行われていた。まだ東日本大震災の発生から20日。あまりの被害の大きさに、対策は打っても打っても追いつかず、「政府は何をしているんだ!」という国民の非難の声がジワジワと高まりつつあった。どの省も通常業務体制に戻れぬままに慌ただしく新人の入省式を迎え、官僚達の疲労はかなり蓄積していた。しかし、原発事故の先行きも復興着手の兆しもまだ全く見えず、彼らを鼓舞するような客観情勢は皆無だった。

ならば、せめて《言葉》の力を借りて組織を奮い立たせるしかない。官僚機構のトップたる総理大臣から、国民向けとは別に全政府職員に向けて、激励の特別メッセージを発しよう─。日頃から文書作成を担当している官邸スタッフA氏と、当時内閣広報官室にいた私は、そう思い立ってこんな文面の私案を走り書きしたのだった。

あと80%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

元「TVキャスター&内閣広報室審議官」が読み解く、あの危機の広報対応 の記事一覧

幻の首相メッセージ「国難の中で新年度を迎えて」(この記事です)
3.11原発事故に学ぶ、情報がない時の広報対応【後編】
3.11原発事故、確かな情報が得られない時、広報はいかに対応すべきだったか
厚生省広報室の過剰防衛による逆効果に学ぶ
なぜ、あの時「収束宣言」が非難されたのか。
発足から1年、トライ&エラー繰り返す原子力規制庁の危機広報

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する