日米の経済関係のさらなる進展を目指して設立された在日米国商工会議所(ACCJ)のある作業部会で、新たな試みが始まっている。日米首脳共同宣言に採用されるなど成果が出つつある。
2012年4月の日米首脳宣言では、ACCJらの共同声明が両国政府活動の成果として取り上げられた。
ACCJには40数カ国1000社ものグローバル企業の会員が在籍しているが、その目的は主に会員社同士のネットワークづくり。60以上の業界・分野別の委員会が存在し、パーティーやイベントを開催することで顧客を探したり、人材採用など同じ職種同士での情報交換の場としている。そのような中、より明確な課題意識のもと、実務レベルで役立つ話し合いの場をつくろうと立ち上げられたのが、インターネットコミッティーの下部組織、「インターネット・エコノミー・タスクフォース」だ。経団連とACCJが組み、日米両国間でインターネットビジネスを成長させるために有効な環境整備を話し合う場を設けることが目的だ。「経団連やACCJは業界団体の一つですが、たとえば著作権に関する話題でいえば、コンテンツホルダーとそれを自由に流通させたいネット事業者の両者がいて、立場が違い過ぎ、議論がまとまりづらいのが現状です。このタスクフォースでは、より同じ課題意識を持つ人たちが集まり、提言できる場と捉えています」とある関係者は話す。
2008年から毎年、共同提言をまとめてリリースしている。09年からは当時の原口一博総務大臣が立ち上げに賛成してくれる形で、日米の両政府を巻き込むことに成功した。日本は情報通信を管轄分野とする総務省、米国は国務省がその窓口となり、局長級以上の担当者が年に1回、ワシントンD.C.や東京に一同に会し、情報交換する。「インターネットビジネスという切り口で日米の担当者・担当省庁同士の直接のつながりができたのは初めてのこと。そういう意味で、意義は大きいと思います」。参加企業にとってのメリットは大きく分けて2つ。日米両政府がつながることにより、一般的に規制緩和が進んでいる米国のインターネット・エコノミーに合わせるよう、米政府から日本側に働きかけてもらうことができる。一企業、一業界団体が行うのとそれとでは、圧力の大きさが違う。「ACCJに所属している企業の多くは、日米をはじめグローバルにビジネスを展開しています。たとえばサーバーを置く場所をどのように報告するか、など国ごとに規制が異なると適宜対応していくのはかなり面倒です。規制が少ないのが理想ですが、とにかく統一してほしい、というのが本音」。