
アメリカでは政権交代が起こると、中枢にいたスタッフはごっそり入れ替わり、政策シンクタンクなどに移る「回転扉」があるが......。
「われわれ政策シンクタンクが行う政策提言と、ロビイングやパブリックアフェアーズは大きく前提が異なります」と政策シンクタンクPHP総研の永久寿夫研究主幹は話す。ロビイングは、企業や業界団体が、自分たちの利益を守る、あるいは拡大するために、政府による政策・法律づくりのプロセスに働きかける活動。また、パブリックアフェアーズは、企業や業界が自らの活動の公益性を世の中に知ってもらい、自分たちの事業活動の価値を広く認めてもらうための広報活動との認識が一般的。一方、政策提言は、特定の企業や団体の利益を守ろうというものではない。社会全体、国全体、あるいは自治体全体の利益を考えた上で、全体最適を図るためのものだ。「古くは、坂本龍馬の『船中八策』、板垣退助の『民撰議院設立建白書』のように、国全体が『こうあるべき』ということを時の政策決定者に訴えるものです」。
PHP総研では、世論形成のため、新聞記者を招いて記者発表をしていた時代もある。しかし、予算や手間の割に効果が薄いために数年前に止めた。いま、最も効果があると感じるのは、ウェブによる発信だと言う。コラムやレポートを書き、それをSNSで広げていくことで、書いたものが検索され、テレビや新聞などメディアからの取材を申し込まれることが増えている。政策決定者に直接レポートを持って行った際にも、そのようなメディア露出の成果が説得材料になる。