変化する社会環境にあわせ、ビジネスは形を変える。また時代が追いつくこともある。ルールを変え、あるいはつくり出し、世の中に提供すべき価値をいかに届けていくか。ビジネスを磨くと同時に、社会からの理解を得ることもまた、企業にとって重要だ。
規制緩和のその先へネット事業者が描く未来
2013年9月、アマゾン、イーベイ、グリー、グーグル、フェイスブック、ヤフー、ディー・エヌ・エーの7社が「インターネットにおける自由で公正な情報の流通」を目指し、そのような環境の発展を促すための政策提言団体「アジアインターネット日本連盟」を立ち上げた。会長社であるグーグルの藤井宏一郎氏にその活動目的を聞いた。
9月、AICJの設立記者発表を行った。左から、グリーの相川真太郎氏、フェイスブックの東海由紀子氏、ヤフーの別所直哉氏、グーグルの藤井宏一郎氏、イーベイの安念宣子氏、アマゾンジャパンの渡辺弘美氏、ディー・エヌ・エーの大井潤氏
AICJの母体のAICは、グローバルにインターネットビジネスを展開する企業の連盟で、シンガポールに拠点を置く。環太平洋地域を含むため、日本もカバーされているが、日本のような成熟市場では個別に政策提言できる事業者団体が必要だと日ごろから関係者と話し合っていた、と藤井氏は話す。そこで、シンガポール本部のオリジナルメンバーだったグーグルとイーベイ、ヤフーが中心となり、普段からその課題を共有し、政策提言や普及啓発活動で連携することの多かった事業者7社が集まって立ち上げたのがAICJだ。「一般的に、アジアの他地域では検閲や表現の自由など規制がより強い。日本はその部分はクリアしていますが、ビジネスにおける利害関係の調整や社会政策上の課題は多いと思います」。特に課題だと感じているのは、著作権に関する問題やプライバシー保護、違法有害情報排除など、目指す「ネット上の情報の自由で公正な流通」と「利用者の安全安心」のバランスに関係する諸問題。メンバー各社は、ECやSNS、インターネット検索、クラウドコンピューティングなど、ネット上の情報流通における付加価値の創出を事業の中核としている。そのため、そもそも自由な情報流通が成立しなければ、その付加価値を世の中に提供することができない。さらに、メンバー各社は2カ国以上でグローバルに事業を展開しており、国境を越える情報やデータの自由流通にも関心が高い。ネット上の情報流通の安全性を確保しながら付加価値を最大化する。そこにメンバーの関心がある。