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「半沢直樹」ブームを背景に銀行特集が大ヒット、「週刊ダイヤモンド」の制作現場

小栗正嗣(『週刊ダイヤモンド」編集長)

あのメディアは、テーマや取材先、紹介するもの・ことをどのように選び、決定しているのだろうか。そして、その裏にはどんな人がいるのだろうか。担当者のインタビューを通じ、それぞれのメディアの「今」に迫ります。

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(C)週刊ダイヤモンド9月21日号

大ヒットドラマ『半沢直樹』最終回に合わせて組んだ銀行特集は、売れ行きが良く増刷に踏み切った。100周年企画としてスタートした『半沢直樹』シリーズの連載も注目を集めている。

徹底した"そろばん主義"

ビジネスマン向けに経済、ビジネス情報を伝える『週刊ダイヤモンド』。経済誌、ビジネス誌ならではの企業・産業記事の枠にとどまらず、教育や医療、相続や資産運用など、時流に合わせて幅広いテーマを取り扱う。コアな読者層は、平均47〜48歳の実務最前線にいる部課長クラスのビジネスマン。5割弱が定期購読者(うち半分が法人契約、約3割が経営者層契約)、半分が市販で流通している。「通常号で1冊690円というのは、おいそれとは買っていただけない金額設定。扱うテーマは読者にとって切実な情報ニーズに応えられるものでないといけません」と話すのは、編集長を務める小栗正嗣氏。「読者が悩んでいること、困っていること」をテーマ設定のポイントとし、足で拾った独自ネタや新しい切り口を積極的に取り込む。

編集部員は約40人。うち、10人が副編集長以上、24人が記者という構成だ。副編集長のうち、8人が自分のチームを持っており、副編集長の指導のもと、記者が企画・取材・記事作成までを一貫して行う体制を敷いている。

特徴的なのが、記者の経歴。新卒入社のプロパー組、一般全国紙からの転職組、産業経済紙や業界紙からの転職組、そして銀行など企業からの転職組が各4分の1ずつという構成で、それぞれのバックグラウンドが異なる。「個々の経歴が異なり、思考が違う者が集う方が面白いものをつくることができる。企画提案の視点や表現のスタイルも人によってさまざまで、常に議論を交わしながら企画や記事を練り上げています。これによって、一つの事象をいろいろな角度から検討し、掘り下げることができると感じています」。

構成の基本は、第1特集、第2特集と2本の特集企画と企業・産業レポート企画、その他連載企画。特にメインとなる第1特集は、読者からの切迫したニーズがあるようなテーマをタイムリーに伝える。今年9月21日発売号は、大ヒットしたテレビドラマ『半沢直樹』(TBS系)の最終回(22日放映)に合わせ、「頼れる銀行、頼れない銀行」特集を実施。ドラマ最終回へと回を重ねるにつれて視聴者の間で広がる、"銀行という業態、銀行マンの実態について知りたい"というニーズをとらえ、増刷をかけるほど売れた。「大体発売から1カ月半前には企画を固めますが、扱うテーマの緊急性によっては、締め切りまで1週間というタイトを極めるスケジュールの時も。大切なのは、"今このタイミングで、読者が本当に知りたいものは何か"ということです」。

同時に"強み"と語るのが、徹底したデータ・数字主義。創刊以来、一貫して変わらないのが、「本誌の主義は算盤の二字を以って尽きる。是とするも非とするも総て算盤に拠り、算盤を離れて何物も無い」という考えだ。"そろばん主義"にとことんこだわり、データを徹底算出し、ランキングや図表に落としこむ。「ウェブの普及によって論評の空間が広がり、誰もがいつでもアクセスできるオープンなデータが増えたことから、生半可なデータを載せても読者には響かない。お金を払ってでも読みたいと思ってもらうには、オープンではない"ここでしか見られない"データをいかにつくることができるかが勝負だと考えています」。

モットーである「経済社会の健全なる発展に資する」ため、不正や不祥事を暴く踏み込んだ取材もしばしば。時に取材を拒まれたり、掲載した記事に対し、抗議や批判を受けることもあるが、取材を通じて明らかになった事実は堂々と掲載する。「ただし、広報と対立関係にあるとは思っていません。価値のある良質な記事は、広報との信頼関係の上に成り立つことも多い」と小栗氏。そんな中で、「信念のある広報担当者ほど、自社が極限の状況に追い込まれたとき、トップや上層部を何とか説得して事実を外に発信しようとする姿勢を見せるものだ」と話す。「実際に、これまでにも志のある広報担当がいたからこそ実現した、という企画はいくつもあります。トップが尻込みしたり、躊躇したりするときほど、広報担当の手腕が試される時では」。

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