IRの情報開示は、PRとは違い、発表すべき項目が細かに定められている。一連の決め事を守った上で、いかに自社ならではの色を出し、ファン株主を増やすか。まず取り組むべきことを解説する。
情報開示なしでは成り立たない
PRでもIRでも、その基礎は「情報開示」だ。企業がどのような理念や戦略で、どんな人たちによって経営され、どんな経営状態にあり、どんな価値のある製品やサービスを提供しているのか、といった情報を持っているのは企業側である。消費者でも投資家でも、それらを手に入れるには企業側からの情報開示に頼るしかない。これを情報の非対称性と呼んでいる。PRの領域では、消費者や一般社会の側が情報を提供しろと企業側に迫るようなシーンは不祥事を起こしたとき以外には考えにくいが、IRでは、市場からの「もっと情報を出せ」という強い圧力が常に企業側にかかっている。そこが少し異なるところだが、PRもIRも情報開示なしでは成り立たない。
IRでは情報開示を2つに分けて考える。「法定開示」と「適時開示」である。
法定開示は金融商品取引法に基づく情報開示のこと。有価証券報告書がその代表だ。決算日から3カ月以内に所轄の財務局に提出して公表しなければならない。開示の遅れや虚偽記載には罰則がある。法定開示はスピードより正確性がより重視される。
適時開示は証券取引所の規則に基づいて行われるもの。たとえば決算発表資料である決算短信は、決算日から45日以内の開示が定められている。企業買収やリストラなどを決定したとき、大きな損失が見込まれる災害被害を受けたときなども、速やかに発表することが求められている。適時開示も正確であることが前提だが、どちらかと言えばスピードが重視される。事実の発生から発表までの時間が長くなればなるほど、その情報を知る人たちの数が増え、インサイダー取引という不公正な取引が行われるリスクが高くなるからだ。