美白化粧品の自主回収で謝罪するカネボウ化粧品の夏坂真澄社長(中央)ら幹部(2013年7月4日)。その後の対応のまずさも傷口を広げることにつながった。
カネボウ化粧品の美白化粧品をめぐる問題が拡大の様相を示している。新たな事実が判明するごとにさらなる風評の山が築き上げられ、話題が繰り返し再燃している。問題をめぐる報道内容や論調の変化を分析するとともに、同社の対応について振り返りたい。
リスク情報、親会社に届かず
老舗企業の「カネボウ」が、製品のリコール対応に関連して、風評に揺れている。名門とされる企業に期待されることは、単にその場かぎりの対応だけでなく、その歴史に恥ずかしくない「高潔さ」と「誰もが納得できる危機管理対応」であるが、現時点で満足できる結果は得られていない。
カネボウ化粧品美白化粧品回収問題については、大きく分けて2つの課題があったと考えられる。一つはリスク防止の視点での課題、もう一つは発覚した以降の対応での課題である。
本来、個別にブランドを有する事業会社を子会社に持つ親会社や持株会社は、個々の事業のオペレーショナルリスクについて任せきりにするのではなく、消費者リスクやコンプライアンスリスク、災害対応リスクなど、風評に直結する重大リスクについて平時から情報を共有し、対応にも一貫性を持たせておくことが不可欠である。薬品、化粧品のように消費者被害が発生しやすい製品製造現場では、特に見逃される小さな欠陥が大きな不祥事に発展する可能性もある。そうした危機意識に対して親会社や持株会社が事前に執るリスク予防体制において、花王側にも問題があったと思われる。
7月4日に発表された回収の第一報は、白斑症状に関して5月に製品との関連性を初めて認識し調査した結果、医療部外品有効成分「ロドデノール」が原因であり、配合された美白化粧品を回収するというものだった。しかし、後日報道されるカネボウ化粧品側の最初の被害情報の認知時期が2011年10月頃であったことや、化粧品利用者の症状と化粧品との因果関係について医師から指摘された時期が2012年10月頃であったことなどから、かなりの期間事実関係について隠蔽されていた懸念が生じている。製品との関連性を否定し続けてきたことで、症状を訴える化粧品利用者への対応も大幅に遅れた。残念ながら名門カネボウに期待されていた「高潔さ」は微塵も感じられない。情報の共有や重大リスクのダブルチェックという視点では、カネボウブランドの独自性を尊重するあまり、現場判断が危機となるターニングポイントを見誤る結果を誘引し、危機情報が親会社へ吸い上げられなかった。