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広報“私流”

医療と社会の橋渡し役、東北大のサイエンスコミュニケーター

東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 特任教授 長神風二氏

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健康調査の現場にメディアを招き、屋外で記者発表を行う(宮城県七ヶ浜町)。

東北大学内にある「東北メディカル・メガバンク機構」(仙台市青葉区)は、東日本大震災の被災地域をはじめ宮城県内で暮らす人々の健康情報を収集することで、次世代型の医療体制を確立することを使命としている。政府による震災復興策の一環として、2012年2月に発足した。ITを活用して患者の治療記録などさまざまな医療情報を大量に共有するシステムを構築し、一人ひとりに合った医療の確立や新薬の開発につなげる狙いもある。

特任教授の長神風二さんは「サイエンスコミュニケーション」を専門とする傍ら、発足当時から広報を担当している。重要なミッションは広く県民の理解を促すこと。同機構では、宮城県民の5%に及ぶ12万人の健康に関するデータを収集することを目指しており、活動への理解と協力を促すための取り組みは欠かせない。9人の広報スタッフはテレビCMのほか、ポスターやニュースレター、リーフレットの作成も担当する。自治体など地域の協力も必要。長神さんは県内すべての自治体に2回以上訪問したという。

メディアへの対応もその延長線上にある。地域密着の自治体広報紙からコミュニティFM、地元有力紙のほか全国メディアのテレビ、新聞、雑誌など全方位で対応する。「全国メディアと地域メディアの関心はかなり違いますが、地域のことを全国幅広く知ってもらったり、逆に医療分野の中で新しい試みであることを地域の皆さんにも知ってもらえるような情報提供をしていきたい」と話す。

東大大学院で生物物理化学を専攻したのち、日本科学未来館(東京都江東区)へ。展示やイベントなどの業務を4年ほど担当した。そこで情報の受け手の視点に立って分かりやすく伝えることの重要性を学んだ。「専門家の言うことがいつも正しいとは限りません。例えば医療分野であれば、患者一人ひとりが判断するための情報を提供していくことが必要です」と指摘する。

職場は変わっても、科学技術と社会との橋渡し役を続けてきた。医師や研究者に取材対応してもらう時は、取材後に放映や掲載結果を伝えるだけでなく、適切な対応ができたか否かについて第三者の視点でフィードバックする。メディアに対しても同様だ。報道内容に誤りがあったり意図が伝わらなかったときは、記者にその真意を問いただす。こうした対応を徹底している企業広報は少なくないが、大学や研究機関では少数派。きっかけは「大学の先生は文句は言うけど意見は誰も言わない」という記者からの指摘だという。

5年前から務める東北大学大学院医学系研究科広報室に加え、今年5月からは東北大学病院の広報室も兼務している。人の命にかかわる医療分野を扱うだけに、伝わり方には気を遣う。疾患によっては差別を生む危険性があるものや、被災地への取材など現地の感情に配慮すべきことも多い。メディア側の関心を先回りして事前に注意を促すことも必要だ。倫理性とバランス感覚が広報にとって重要だと考えている。

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長神風二(ながみ・ふうじ)氏

東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 特任教授(広報・倫理法令担当)。2002年東大大学院総合文化研究科博士後期課程満期退学。日本科学未来館、科学技術振興機構、東北大学脳科学グローバルCOE特任准教授を経て、2012年から東北メディカル・メガバンク機構発足とともに特任准教授。2013年から現職。

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