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小さなお店を流行らせる広報術

グランドハイアット東京に見る「もの言わぬ説得術」

吉野信吾

信頼というイメージ

アナウンスする、ビジュアルで伝達する、活字で流布する......といった具合に、広報や販促、宣伝において、特定、不特定多数を問わず、訴えかけるということは、伝えたいことを意識的になげかけ、説得するわけですが、その根本は訴えたい側であるお店や企業が能動的に働きかけるものです。いわゆる"意識的に"というやつです。

意識的に訴求行動にでるから相手に伝わるのであって、無意識のあいだに伝わっている、なんてことはほとんどありませんよね。お店においてもお客さんに対し店側が伝えたいこと、例えば「本日は長崎県・五島列島直送のクエの刺身がお薦めです」といったアナウンスが黒板に書いてあったりしますが、これは売り上げるための一方法であると同時に"当店は良いモノを厳選してお客さまに提供しています"といったことをアピールしているわけです。

しかし一方で、こうした広報や販促、宣伝においての常套手段以外に、実は"黙って質の高さを披露する"サイレンス・イズ・ゴールデン(沈黙は金)という術(すべ)も効果がある、というのが本日の話です。

ホテルの飲食部門は、街場の飲食店よりも通常値段が高いと相場が決まっています。質、サービスともども平均レベル以上のクオリティを確保している、といった「信頼というイメージ」がそこを下支えしているからです。逆を言えば「信頼というイメージ」を損なった場合、そのダメージは計り知れず、失墜した信頼を取り戻すことは容易ではありません。

実際、バンケットで大勢の食中毒患者を出したホテルがありましたが、営業停止に追い込まれたばかりでなく、予約されていた結婚式やパーティなどのバンケット業務はすべてキャンセルされてしまいましたから、莫大な実損失のみならず信用回復には長い時間が必要とされてしまいました。それだけ「信頼というイメージ」"ホテルなら安心"という売り物こそが、ホテルの最大の商品でもあるわけです。

翻ってみれば、その「信頼というイメージ」の商品を上手く売り込めさえすれば、いくら値段が高くてもお客さんをさらに獲得できるとは思いませんか。その商品は形になっていないものですし、お客さんがどう思ったかも直接問いかける以外には確かめようもありません。つまりホテルの「信頼というイメージ」商品は、電話の応対、接客態度、清潔度、内装の豪華さ、センスの良さ、飲食のクオリティ......といったすべてのことを日々重ねてゆくことで、お客さんのイメージに刷り込まれてゆくのです。そうした日々のホテル業務のなかで、バーにおける「信頼というイメージ」商品、それも"黙って質の高さを披露する"サイレンス・イズ・ゴールデン(沈黙は金)という術の実例をご紹介します。

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