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実践!プレスリリース道場

初回出荷14万丁で大ヒット!ユニーク商品「ザクとうふ」のリリース公開

相模屋食料「ザクとうふ」

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新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを紹介する「リリース道場」。今回は、写真映えし、メディア受けしやすいユニークな商品を着実に話題化したリリースです。

ユニークな外観前面に

春まで5年半にわたり連載していた「リリース道場」が、装いも新たに再開することになりました。今月からまた、各社の優れたプレスリリースを紹介しながら、リリース作りやPR戦略のヒントを伝授していきたいと思いますので、御期待下さい。

リニューアル第1回に取り上げるのは、相模屋食料の「ザクとうふ」。あの有名なアニメ『機動戦士ガンダム』のキャラクターである"ザク"をかたどったユニークな商品です。同社は群馬県前橋市という地方都市の中小企業でありながら、日経MJ恒例の「2012年ヒット商品番付」に見事選ばれました。これはなかなかあることではありませんので、その裏にどのようなPR展開があったのかが気になるところです。

まずリリースを解説します。このリリースを見て私の頭に浮かんだのは、「まるでサッカーのペレのようだ」という形容でした。その心は基本を徹底した理想形のリリースであるということ。神様と呼ばれた名プレーヤーも実は特別なことはしておらず、すべては基本を徹底的に磨いていたと言われています。このリリースでは、タイトル、リード、本文、連絡先という必要最小限の要素を1枚で完結するよう配置し、2枚目に参考資料を付けています。本文も余分な表現は極力省いてわかりやすく、程よい余白の作り方も上手です。

商品写真はユニークな外観がわかるよう、袋から取り出した状態で載せています。広報室室長の片岡玲子さんによれば、この写真は劇中シーンの再現でもありますが、ザクの目(モノアイ)とリリースを読む人の目が合う角度にまでこだわっているのだとか! この目に見つめられたら記者もイチコロです。

2枚目の参考資料にはあれこれ入れ込みたくなりますが、メディアの関心が高い上位2項目「開発コンセプト」と「商品の特長」に絞りました。以前、時計のリリースを紹介した時はスペックが必要不可欠な要素でしたが、ザクとうふのような商品を買う人に最も響くのは、マニアックなこだわりです。何が大切でリリースに載せるかは、見誤らないようにしましょう。誰もが知っている大企業というわけではないので、末尾に会社の基本情報も必須です。

記者発表会場にもこだわり

そもそもこんなユニークな商品が生まれたのは、鳥越淳司代表取締役社長が熱烈なガンダムファンであることによります。小学生時代からガンダム好きで、将来はプラモデル屋になりたいとまで考えた社長の夢を120%反映した商品で、カップ一つとっても、複雑な形をリアルに表現できるよう、容器メーカーに20回以上試作してもらったそう。敵役のザクをピックアップしたのにも、"量産型"のキーワードが商品に合っていたのと、豆腐は食の"名脇役"であることなど、様々な理由があるのです。武器をフォークにしたノベルティも含めて、発案者自身が納得できるマニアックさがガンダムファンの心を捉えました。

さらに効果的だったのが、記者発表を開催したこと。場所はマニアの聖地・秋葉原で、ガンダムの本物の声優をゲストに招く徹底ぶり。ホビー系やアニメ系のメディアを呼ぶのに力を入れましたが、「そのジャンルのメディアは、会場内で記事を書いて、すぐにサイトにアップされるんです。ネット上であっという間に情報が広まって、サイトにPVを掲載したところサーバーがダウンするほどの反響でした」。案内状は552通送付し、来場数は64媒体。6月末までに203件掲載されています。

また豆腐は鮮度が命であるため、伝統的に各地の地元メーカーが強い商品特性があります。相模屋も東北・関東から西は愛知までと商圏は限られています。それゆえSNSには「どこのお店で売っていたよ」という情報が飛び交いました。そうしたゲーム性も、マニア心を刺激する要素だったのでしょう。

企画モノは初回出荷が5000丁でヒットと言われる豆腐業界で、なんと14万丁を出荷(ザクとうふの場合は"出撃"という)。2カ月で100万丁、初めて全国47都道府県に流通する大ヒット商品となりました。この量産体制の中、モノアイのついた帯付けだけは社員総出で手作業をしたというのも微笑ましいエピソードです。以降もザクとうふを使ったユニークなレシピをHP上に公開したり、続編として発売した「ズゴックとうふ」では消費者から写真を募集してコンテストを行ったりと、ファンが楽しめる環境づくりを続けています。

豆腐業界に新風

実はこの商品には、豆腐売り場に縁遠い30~40代男性を取り込むという命題もあったのですが、スーパーマーケットからは「開店直後に背広姿の人が来て、ザクとうふだけを10丁買っていった」という声も寄せられました。「地方に住む息子に送ったら、初めて礼状が届いた」というお母さんや、「夫を驚かせるために娘とレシピを作っています」という奥さんがいたり......、と家族のコミュニケーションにも役立っているようです。「今後もただ商品をPRして販売するだけでなく、食シーンも一緒に提案していきたいと思います」と片岡さんは話します。

現社長が2007年に就任以降、大きな構造改革が進み、売上は6年間で4倍に増えた同社。それまで1時間に1500丁だった生産体制を8000丁に拡大し、広域流通チェーンとも組むなど、これまでの豆腐メーカーの限界を打破しようとする勢いを感じます。東京オフィスを開設したのは2011年で、営業・マーケティング・PRの拠点としています。多くのメディアは東京から一歩離れただけでも取材に行くのを面倒臭がるので、東京で取材対応ができるのは非常に有効です。

長らく豆腐は、スーパーでも「棚の下の段の一番手前にあれば売れる」と言われるくらい、消費者が深く考えずに手にしている商品でした。鳥越社長は結婚を機に相模屋に転職しましたが、雪印乳業の出身だったことから、マーケティングの発想を持ち込みました。もちろん入社後は徹底的に製造の現場で豆腐作りを学んだので、部外者が好き勝手をやっているという感じではありません。京都の男前豆腐店が流行ったのもそうですが、古い慣習が固まっている業界に新風を吹かすことにこそ、これからは商機があります。そのブレークスルーに必要不可欠なのが「ザクとうふ」のような際立った商品で、相模屋の名前を全国的に広めた意味でも意義深い商品といえるでしょう。

そんなザクとうふですが、元をただせば社長の趣味。豆腐業界では木綿と絹の基幹商品が消費の7割以上を占め、変わり豆腐などは5%に過ぎないそうです。ザクとうふも木綿と絹の商品づくりにきちんと取り組んでいるからこそできた商品で、赤字にさえならなければいいと、儲けを考えない"遊び"の部分で作ったといいます。でもえてして、そういう商品がヒットするのは、私も数多く例を見てきたことです。社運を賭けた商品で遊ぶと会社が傾きかねませんが、脇の部分で徹底的に遊べる寛容さはチャンスを呼びます。どこの会社も見習うべきものがあると思います。

リリース映えのする商品を開発しよう

今回は何といっても、ガンダムの"ザク"を豆腐にしてしまうという斬新な企画がインパクト大でした。商品の見かけのインパクトが大きいと、ご覧のようにリリース上でも写真映えがして、概してメディアの反響も良くなります。

また初めて知った事実ですが、豆腐の3個パックは従来、絹豆腐しかなかったそうです。そこに木綿豆腐の3個パックを実現したのも相模屋ということです。他にももっちりした食感の絹厚揚げなど、"業界初"の商品開発は常に同社が心掛けていること。"業界初"もメディアがよく取り上げるキーワードの1つです。

このようにリリースに載った時に、メディアが反応しそうな商品を開発すること。商品開発の時点でPR の視点を盛り込むことは、私が常々推奨していることです。商品開発をする際には、その商品がリリースになった時のことを想像してみてほしいものです。

    【企業情報】

  • 企業名: 相模屋食料株式会社
  • 資本金: 8000万円
  • 所在地: 群馬県前橋市鳥取町123
  • 代表者: 鳥越淳司
  • 売上高: 142億円(2013年2月期)
  • 従業員: 460人
  • 創 業: 昭和26年
  • 業 種: 豆腐及び豆腐加工品(油揚げ・厚揚げ等)製造業

  • 【広報戦略】

  • 広報部門設立は2011年、広報室社員は2人。12年度に配信したリリースは8件、広報イベントは4件(新商品発表会2件、レシピ写真コンテスト1件、ザクとうふ100万機突破記念キャンペーン1件)。年間のメディア掲載数は306件。
  • 広報の基本方針は「徹底的に考え、素早く実行する」。今後の広報目標には「相模屋ブランドの確立」を掲げている。
井上岳久氏

井上岳久(いのうえ・たかひさ)

井上戦略PRコンサルティング事務所・代表。1968年生まれ。フードテーマパークを年間300本以上のリリース配信などの独自の手法で成功に導いたPRコンサルタント。「無料で1億人に知らせる門外不出のPR広報術101」(明日香出版社)ほか著書多数。

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