昨今、新規顧客の獲得からシフトし、既存顧客重視のLTV向上施策やCRMに注力するブランドが増えている。マーケティング担当者のみならず、販促領域の担当者も「買い続けたくなる仕組みづくり」に力を入れるべきときが到来している、と話すのはWACUL代表取締役の垣内勇威氏だ。
国内においては人口が減少し続けており、厚生労働省によると日本人の出生数は2019年に90万人を、2022年に80万人を、2024年速報値では70万人を割ったことがわかっています。さらに物価の高騰が進む中、値下げプロモーションには限界がありますし、消費者の財布のひもも固くなり、生活に必要だと感じている最低限のものだけを計画的に買う人が増えました。「この商品はこのブランドで買おう」と決まったブランドを買い続ける人もいると考えると、新規獲得というのは年々難しくなっていると思われます。
LTVを向上させるための戦略は部署分断ではなく全社マターが吉
上記の理由から、いま自社商品を買ってくれている人、既存顧客に長く買い続けてもらうための施策=「LTV(顧客生涯価値)の向上」に注力する企業が増えています。
しかしその一方で、LTV向上はマーケティング担当がやるものといった認識が広がっているのも事実。残念ながらマーケティング部だけ、ブランド事業部だけといった部署ごとに分断された施策だと、「LTVの課題に着手した気になった」だけで実際の効果にはつながりません。
アプリ登録キャンペーンを例に出すとわかりやすいかと思いますが、実際にその施策を実行するのは、お客さまを接客するスタッフや、小売へキャンペーン売り場を提案する営業担当者です。彼らが納得して、意味がある施策だと思って実行しなければその効果は半減してしまいます。
一方、分断型ではなく、全社マターとして「LTV最適化」を進めていけば、実際にお客さまと接する販促領域担当者にも戦略・施策が自分ごと化されるでしょう。それによって部署間で双方向のコミュニケーションが可能になり、より高い効果が期待できます。
具体的なフローに落とし込むと、計測した購買データや、小売商談で獲得したショッパーインサイトを念頭に置いて、マーケティング部が戦略を立てる。その戦略から導き出した施策を、店頭スタッフ・営業部が腹落ちした状態で実行。そして、施策を実行したことで聞かれたお客さまの反応などを戦略立案担当者にフィードバックするーー(図1)。
図1 全社マターの「LTV最適化」とは

部署で分断されたLTV向上施策だと、...