LTV向上が重要視される中で、それに対して効果的な手法として挙げられる「既存顧客の離反防止」。本稿では、顧客離脱のメカニズムを研究する國學院大學経済学部教授の宮下雄治氏が、ブランド・企業からの離反が起きやすいポイントや、それに対する対策方法について解説する。
これまで高い知名度とブランド力を背景に、盤石な顧客基盤を築いてきた企業といえども、顧客を維持することが難しくなってきました。消費財であれ、産業財であれ、企業を見る買い手の目はこれまで以上に厳しくなっています。
デジタルの世界では、こうした傾向が特に顕著です。グローバルな市場で鍛えられてきた海外ブランドがオンラインに参入し、消費者が質の高いサービスに触れる機会が増え、サービス価値に対しての鑑識眼が養われるようになったのです。良質な顧客体験が増えれば増えるほど目が肥えていくのは当然のことで、これまでは些細な問題だと考えられていたことも、今では不満要素に発展するケースが増えています。
また、コロナ禍以降の傾向として、歴史的な物価高騰が家計を圧迫していることもあり、消費者はこれまで以上に買い物に慎重です。外食、小売、各種サービスに共通して、コスパにすぐれた企業が支持を集め、低価格に強みを持った節約志向の受け皿となる企業が成長を続けています。この傾向は今後も続いていくでしょう。
顧客離れの3要素は価格・時間・ストレスにあり...
あと80%