現在、店舗は単なる販売の場にとどまらず、顧客にとっての「特別な体験」を提供する空間へと進化している。消費者の価値観が変化し、ただ物理的に商品を購入するだけでなく、その場でしか味わえない感動や楽しさを求めているためだ。では、店舗が人々の購買意欲やワクワク感、そして足を運びたくなると感じさせる要素は一体どう生まれるのか。セブン-イレブン・ジャパンでプロパー初の女性MDとして、コンビニからアパレルに至るまで、幅広い業界での商品開発や売り場づくりに携わってきた松澤圭子氏に、心を掴む売り場づくりの極意を聞いた。
消費者の期待を超える売り場
セブン-イレブン・ジャパンに10年間勤務し、うち約7年間をMD担当として過ごした松澤氏。業界の発展とともに、数多くの革新的な商品開発や売り場づくりを牽引してきた。そのキャリアを振り返ると、松澤氏が最も重視していたのは、時代の変化に柔軟に適応することと、消費者に「予期しない出会い」を提供することだという。
松澤氏がコンビニ業界に入った当初、同業界は黎明期にあり、現在よりも売り場で展開する商品も限られていた。ただ、消費者のライフスタイルが変化するとともに、従来の缶詰やドリンク中心の品揃えから、デイリー商品が中心となり、グルメや健康志向のニーズも売り場に反映。弁当やおにぎりだけではなく、惣菜・デザートが伸長していった。生活者のライフスタイルやニーズの変化をいち早く捉え、売り場に新たな価値を加えることが松澤氏の目標だったという。
「当時、コンビニは消費者の『困ったときに買いたい』というニーズに応えることが求められていました。しかし私はそれにとどまらず、消費者が『思っていた期待以上のもの』を売り場で提供することを目指していました。その結果、従来のコンビニでは見られなかった商品群、例えば具材たっぷりの調理パンやサラダスパゲティといったヒット商品を生み出すことに繋がりましたね」(松澤氏)。
消費者が求める期待以上のものを提供する上で松澤氏は、「消費者の半歩先を行く」商品開発が重要だと話す。
松澤氏によると、商品開発における基本的な要素は、価格設定、製造方法、提供数量、展開時期、品揃え、そして売り場づくりだ。この6つの要素を…