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“ご自愛”プロモーション

なぜ今の消費者に「ご自愛」「ご褒美」訴求が響くのか

丸山一彦氏(和光大学)

近年、消費者の間で「ご自愛」や「ご褒美」というキーワードが強く響き、プロモーションや商品開発に多く起用されている。背景には、ストレス社会において、癒やしを求める消費者の心理や動向の高まりがあるようだ。では、人々がご褒美を求める消費行動はいつから始まり、どのように変化してきたのか。本記事では、購買行動分析などを専門にする和光大学の丸山一彦教授が、現代消費者の心理や行動パターンを探り、なぜ今「ご自愛」や「ご褒美」訴求が効果的なのかを分析する。

私が、飲料やお菓子、雑貨類など、気楽に贅沢感が味わえるプレミアム商品の消費財を研究し始めたのは2010年頃のこと。当時から、プレミアム商品の消費財は「頑張った自分へのご褒美」として、20代のはたらく女性や大学生が購入する傾向にありました。実際に、私が2013年に行った「ご褒美消費を活用したコンビニスイーツ市場の有効性」に関する研究でも、20代の女性が自分へのご褒美やストレス解消の手段としてスイーツを購入していることがわかっています。

「ご褒美消費」のこれまで

また、その研究では、大学生も同様の消費を行っていることが明らかになりました。こうした消費行動は、当時から「ご褒美消費」と形容されています。それから約15年が経ちましたが、現在でも「ご褒美消費」や「ご自愛消費」と呼ばれる消費形態は、注目のキーワードです。

しかし、実際にはご褒美消費に関する研究は依然として少なく、またその調査も、若い女性特有の消費現象と捉えているものが多いです。さらに、近年のSNS映えを狙った一時的な流行や話題に焦点を当てたものも多く、表層的な部分のみのアプローチにとどまっています。

こうした現状を踏まえると、私たちはご褒美消費の結果論や一時的な傾向にしかアプローチできておらず、その本質を深く理解し、ビジネスへの有効活用ができていないと考えられるでしょう。

そこで本稿では、ご褒美消費の構造や、その際にはたらく人間の心理について考えてみたいと思います。

「ご褒美」がもたらす3つの役割

まずご褒美消費とは、自身へのご褒美として価値ある商品やサービスを消費する行為を指します。そして、ご褒美消費の役割には、大きく分けて図内の3つがあります(図1)。

図1 ご褒美消費の3つの役割

これらの役割に共通しているのは、ご褒美消費が何らかの困難やストレスによって生じる身体的・精神的な負の状態を解消し、バランスを取るための「報酬」となる点です。

言い換えれば、ご褒美消費とは、自己を励ますために外的なインセンティブ(動機)を構築する行為であるといえます。このようにして、ご褒美消費は単なる贅沢ではなく、心身の状態を調整し、…

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