delyが開始したデジタル販促サービス「クラシルリワード」が、販促/マーケティング担当者の間で話題沸騰している。消費者のレシートデータや、電子チラシの閲覧データ、位置情報データなどを活用し、販促の費用対効果を可視化したこれまでにないサービスとして、口コミでも拡散されている。代表取締役CEOの堀江裕介氏によると、「クラシルリワード」の軸にあるのは、レシートデータとアプリユーザーへ還元するポイントの2つ。最終的に目指すのは消費者一人ひとりにパーソナライズされたダイナミックプライシングだ。
費用対効果を可視化しつつ“即日”実施できる販促
──delyといえば、料理レシピ動画「クラシル」のイメージが強いです。なぜデジタル販促の領域に挑戦したのでしょうか。
「クラシル」ではこれまでも小売業やメーカーに向けたタイアップコンテンツの制作を行ってきました。実際の利用シーンを想定した「料理」というコンテンツですし、成果も出ていたのですが、そのレシピ動画が実際にどの流通で、どの程度売上に貢献したのかは明確にデータとして取得できているわけではありませんでした。
しかし従来からの販促を考えてみても、効果が見えにくいことは共通課題だったはずです。例えば棚を獲得するためのテレビCMや、特売を知らせるチラシなど、手法はさまざまに存在していますが、それらも費用対効果を明確に見ることは難しかったですよね。テレビと売り場、チラシと売り場はオンライン上で繋がっているわけではないので、なおさらです。
ですが、メーカー各社は今、予算投資の最適化が求められていて、費用対効果の可視化の重要性は高まっています。最小限の予算で最大限の効果を発揮する販促を必要としているはずです。でもそのためには、オフライン購買における販促の効果を見ることができる手段が必要でした。
こんな販促を実現したかったのはdelyも同じです。棚から商品がなくなるくらい影響力があるサービスをつくりたいと思っていました。なおかつ費用対効果が明確で、“即日”実施できるような……。
理想論に聞こえるかもしれませんが、そこでローンチしたのが「クラシルリワード」。これまで実現できなかったオフラインで行われる購買の効果を可視化し、最短2週間で実行できるうえに、来月のPOSをあげることができるデジタル販促サービスです。
レシートデータなら流通横断で購買データが見える
──「クラシルリワード」では、どのようにオフラインの購買行動をデータとして可視化しているのですか。
「クラシルリワード」は、電子チラシの配信や移動距離に応じたポイント付与、マストバイキャンペーン「レシチャレ」に参加したユーザーへの特典還元など、「買い物にまつわるすべての行動をお得に変えるサービス」です。ユーザーファーストで開発されたアプリですが、これまで実現できなかったオフラインで行われる購買の効果を可視化したサービスでもあります。
そもそも「クラシルリワード」で取得しているデータは、アプリユーザーの属性データ、電子チラシの閲覧データ、スマートフォンの位置情報データ、そしてレシートデータです。それぞれのデータを組み合わせることで、「クラシルリワード」内で実施される各施策の効果を測定し、費用対効果を可視化しています。
例えば電子チラシでは、閲覧データと位置情報データを掛け合わせることで「送客効果」を可視化できる。さらに、チラシの閲覧データとレシートデータを掛け合わせれば、オフライン購買の費用対効果も見ることができる、といったようなイメージです。
──レシートと聞くとアナログな印象も受けます。なぜレシートに着目したのですか。
購買情報は通常、小売業の各店舗が持つPOSデータを買い取ることで入手します。ですがこのPOSデータ、どこか特定の小売業のデータしか手に入らないのは周知の事実です。
しかし、メーカーが求めているのは複数の小売業を横断したデータ。自社商品がどのお店で、どう買われているかを知りたくても、すべてのデータを買い取るのは難しいですよね。
でもレシートなら、それが可能になるんです。アプリユーザーがキャンペーン参加のために自発的に提供している情報なので、流通を介さずに購買データを取得することができます。
──メーカーはレシートの詳細なデータも知りたいところだと思います。
「クラシルリテールプロモーション」では、対象商品と、その購買におけるバスケット単価を開示できます。ご要望があれば、キャンペーン対象の自社商品が、具体的にどの商品と買われているのかがわかる併売データも提供可能です。これは当社が、小売でも、メーカーでもない第三者の立ち位置だからこそできること。特定の小売業と連携するリテールメディアよりも、広くデータを取得できるといえます。
パーソナライズされたダイナミックプライシング目指す
──ここまで効果を可視化できると、販促のあり方も変わりそうです。
これまではテレビCMのGRPも指標として使われてきましたが、効果が見えにくいため、「これくらい売れるでしょう」という仮説に留まっていました。ですが「クラシルリワード」は費用対効果を可視化することで、今まで余剰に使っていた販促費も可視化できるようになっています。真に最適化された販促を実現できるようになったと言っても過言ではありません。
ちなみに、「クラシルリワード」のコストはテレビCMより格段に低いですし、成果報酬型のサービスなので実績に応じた費用だけで済みます。これまでテレビCMに予算を割いていた企業であれば、浮いた費用を「クラシルリワード」ポイントとしてユーザーへ還元するほうが、次の購買機会も創出できますし、好循環ですよね。
一方で、テレビCMを打てないことを理由に棚獲得を諦めていたメーカーも、「クラシルリワード」で最適化された販促によって、店頭で勝てるようになるはずです。
──今後、delyは「クラシルリワード」をどんなサービスにしたいですか。
「クラシルリワード」で成し遂げたいのは、各消費者にパーソナライズされたダイナミックプライシングができる販促プラットフォームです。それも、値引くことなく。これは当社が「ポイント」に注力している理由にも大きく関わります。
販促の最適化を考えれば、メーカーも小売も、状況や顧客に合わせた価格設定や広告配信をしたいはずです。でもチラシは同じクリエイティブを一括配信しますし、キャンペーンをしようにも通常は2カ月ほどかかる。個人に合わせた値引きなんて、ほぼ不可能でした。だから「クラシルリワード」では「ポイント」なんです。
キャンペーン参加者に付与する「ポイント」を調節すれば、値引きすることなく、顧客に合わせたダイナミックプライシングができるという仕組みです。もちろんキャンペーンは「クラシルリワード」内で完結するので流通も稼働することはありません。最短即日で実行できることが理想です。
最終的には、delyがもつ1stPartyデータと流通を横断したレシートデータを掛け合わせて、消費者ごとに最適化された商品を紹介できるようなサービスにしたいですね。「クラシルリワード」が販促施策として当たり前の選択肢になる日がくるために、今後も小売、メーカー、消費者のハブとして、それぞれのニーズに応えていきます。
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