限られた予算で最大の効果を創出したいと考えるメーカーは増えている。とはいえ、小売への商談を考えればテレビCMも大切。販促効果が見えづらくても出稿を続けることも多い。ここで解決の糸口になるのが「レシピ」。このほど、国内No.1のレシピ動画サービス「クラシル」を展開するdelyと食品卸売業大手の三菱食品が手を組み、店頭サイネージ「クラシル“storeTV”」をローンチ。「クラシル“storeTV”」を含んだ一気通貫の販促を2024年8月に実施し、大手GMSでサイネージを利用したキッコーマン食品の対象商品のPOSは前年比268%となった。成功の要因は「レシピを見た、店に来た、商品を買った、料理を作った」という流れのユーザー体験の実現だという。
食ビジネスで社会を豊かに 買い物の可能性を拡張する
──三菱食品とdelyは2024年1月に業務提携を締結しています。
小山:三菱食品は食品商社として、「食のビジネスを通じて持続可能な社会の実現に貢献する」をパーパスに掲げています。卸・物流はもちろん、食品を消費者に届けるための販促支援のサービス開発も行ってきました。delyもレシピという食のビジネスで社会を豊かにすることを目指す会社ですよね。当社と同じ価値観をお持ちだと考えたことが業務提携のひとつの背景です。
柴田:delyはレシピ動画サービスの「クラシル」で料理が好きな方や、料理初心者の方へ。そして、電子チラシやレシートアップロードでお得な買い物ができる「クラシルリワード」では、買い物層へアプローチできていましたが、その繋がりをオンラインでしか作れていなかったのは課題でした。
そこでタッグを組んだのが、三菱食品。小売業からの厚い信頼だけではなく、店頭サイネージを保有していることも魅力的でした。delyが持つ、月間利用者5900万人のレシピ動画サービス「クラシル」と、国内No.1のお買い物サポートアプリ「クラシルリワード」のユーザーデータを掛け合わせれば、買い物の可能性が拡張すると確信しましたね。
小山:当社も食品の販促に携わる中で、購買動機としてのレシピの有効性は感じていました。店頭で素材を見て、料理を想起し、商品を買うという行動を考えても、レシピは重要な購買のフック。サイネージを使い、店頭でレシピを訴求できれば新たな販促に繋がると思いました。
「見た、来た、買った、作った」購入後の体験も見える販促施策
──そこで開発したのが、「クラシル“storeTV”」なのですね。
小山:「クラシル“storeTV”」は三菱食品が保有する店頭デジタルサイネージ。delyのレシピ動画を流し、なおかつそのレシピに使用されている商品の広告が配信できるサービスです。設置しているのは全国約140チェーン、4,500店舗。1店舗につき最大3台常設しており、累計で約12,000台設置しています。設置場所は生鮮食品売り場。消費者が素材を選ぶ瞬間にレシピと広告を配信することで、対象商品の購買動機を高めます。レシピを軸にした販促なので、生鮮食品と加工食品の併売も効率的に生み出せるのが特長です。
柴田:商品を使用したレシピ動画の制作と広告配信の対象になるのは、「クラシルリワード」でマストバイキャンペーンを実施している商品です。さらにサイネージにはビーコンが搭載されているので、「クラシルリワード」アプリのユーザーが前を通ると、プッシュ通知で対象商品のキャンペーン情報も発信できます。
小山:つまりカスタマージャーニーとして、ユーザーがレシピ動画と電子チラシを確認し、来店。店頭でも同じレシピ動画と、そのレシピに使われる商品の広告が流れていて、視認。近くを通りかかれば、プッシュ通知でレシピに使われる商品がお得に買えると気づき、購入──、という一連の流れをつくることができるのです。来店前から購買意欲を高め、店頭で最後のひと押しを実行する。これが「クラシル一気通貫施策」の特長です。
──「クラシル一気通貫施策」の強みはなんでしょうか。
柴田:最大の価値は「購買」の先にある「料理を作った=商品を使った」ことがわかる点にあります。その背景にあるのが、“「クラシルリワード」への料理写真アップロード”。「クラシルリワード」のキャンペーン経由で購買したアプリユーザーが、作った料理写真をアップロードするとポイントが手に入るという仕組みです。「購買」も重要なKGIですが、小売業への向き合いや自社の利益を考えたらリピーターの創出やLTVも大切。「レシピを見た、お店に来た、商品を買った、商品を使って料理を作った」という「体験」を巻き込んだ一気通貫施策ができることによって、単発ではない、持続的な販促ができるのも強みです。
POSは前年比268% テレビに代わる投資先へ
──実際にキッコーマン食品が「クラシル一気通貫施策」を利用したキャンペーンを行ったと聞きました。
小山:キッコーマン食品さんが行ったのは、クラシルアプリ、クラシルSNS、クラシルリワードレシチャレ、クラシルTV、たべチャレといったdelyのあらゆるサービスを使った一気通貫施策。前述のレシチャレや店頭サイネージのクラシルTVだけではなく、アプリの認知獲得施策やSNS広告も併せて利用した事例です。結果、大手GMSで販売する「デルモンテ リコピンリッチ トマトケチャップ」のPOSが前年と比較して268%に伸長。テレビCMを打ったわけではなく、「クラシル一気通貫施策」による結果です。
柴田:購買だけではなく、「商品を使って料理をした」ことにも繋がったデータも出ています。このキッコーマン食品さんのキャンペーンでは、購入者のうち15%のユーザーがレシピを体験したことがわかりました。これは、前述の「料理写真アップロード」によって判明したことです。
──テレビCMなしで商談ができるとなると、販促の常識も変わりそうです。
柴田:先ほどのキッコーマン食品さんの結果をうけ、delyのサービスを使った52週MDに沿った一気通貫の販促施策を2024年10月から「クラシルフェス」として共同で販売しています。小売業への商談は古くからテレビCMが重要でしたが、今は投資対効果を厳しく見る時代。テレビCMよりも効果的に購買に繋がる施策に予算をかけたいメーカーは増えています。そのようなニーズに応え、「クラシルフェス」はテレビCM以外の投資先として、POSやLTV貢献で選ばれる存在になることを目指すサービスです。データ分析も行うことで、施策のPDCAサイクルが回っていくモデルまで作り上げます。
小山:良い商品なのに、テレビCMを投下しないが故に上手く商談に繋げられなかったメーカーの方々も、棚を獲得してPOSに貢献できるチャンスになると思います。デジタル化で情報の入手方法が変わっても、食品の購買のほとんどはまだ実店舗の店頭で行われているのが実態。買い物体験をより豊かにし、生活者への新たなコミュニケーションを作り出すことで小売業・メーカーの売上を最大化させていきます。
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