キャンペーンは売価を下げてお得感をつくることがほとんどだが、過度な値引きはブランドイメージを低下させる懸念がある。そのうえ、小売にとっては通常価格より安く販売するため、利益率も下がってしまう。しかし、花王がウエルシア薬局で実施したビオレuのキャンペーンは値引きなし。なおかつ、POSは前月比130%を達成し、ウエルシア薬局への新規顧客の送客も実現した。背景にあるのは、dely「クラシルリワード」のマストバイキャンペーンだ。
買い物に関連する行動が次の買い物をお得にする
──花王はウエルシアでdelyの「クラシルリワード」を使ってキャンペーンを実施しました。「クラシルリワード」はどのようなサービスですか。
渡邉:「クラシルリワード」はdelyが展開する国内No.1のお買い物サポートアプリです。ユーザーは、買い物中に発生する移動や買い物後の「レシート撮影」でポイントが手に入り、入手したポイントはPayPayなどの特典に還元できるといった「買い物を取り巻く行動で、次の買い物をお得にする」サービスです。さらに、全国3万店超の電子チラシも登録されています。
山口:「クラシルリワード」は、小売業と連携した電子チラシだけではなく、メーカー向けのデジタル販促サービスも展開しています。今回花王さんが利用したのは、マストバイキャンペーンの「クラシルリテールプロモーション」※です。メーカーはアプリ「クラシルリワード」内のレシチャレ枠でキャンペーン対象商品の情報を掲載できます。告知にはキャンペーンの参加条件や対象商品の内容・特徴も記載できるため、これだけで商品の出会いの場になるのもポイントです。
渡邉:店頭での購入後、キャンペーン該当商品のバーコードとレシートの撮影、そしてアンケートに回答したアプリユーザーにはポイントが付与される仕組みになっています。アンケートは必須回答なので、購入者に聞きたいことを確実に聞けることも強みです。
──「クラシルリテールプロモーション」では、流通を指定したキャンペーンも実施できると聞きました。
三澤:今回花王が利用したのが、この“流通指定マストバイキャンペーン”です。ウエルシアさんに限定して「クラシルリテールプロモーション」を実施しました。対象商品に選んだのは「ビオレu ザ ボディ 泡タイプ」という商品。リピート購入の促進も見込んで、本体と詰め替え用のセット購入をキャンペーン条件としました。期間は、2024年4月から5月にかけての1カ月間です。
山下:花王が流通指定キャンペーンで目指したのは、ウエルシアさんへ新規顧客を送客することでした。というのもウエルシアさんには「ウエル活」というポイ活文化があり、ポイントを活用してお得に買い物をするお客さまが多い傾向にあります。ウエルシアさんのお客さまと、ポイントを軸にした「クラシルリワード」のマストバイキャンペーンは親和性が高いと考え、ウエルシアさんに絞って実施しました。
岩田:ウエルシアは、新生児向けの商品から介護用品まで、購買対象年齢が幅広いのが特徴です。日々の生活で必要なものが品揃えされており、顧客層も幅広いと思いきや、もっとも多いのは40~60代であり、とくに20~30代の集客が大きな課題です。花王さんは当社の課題を理解してくれていましたし、「レシチャレ」でも若い顧客層の獲得を見込めるので、ぜひ挑戦したいと思いました。
──「クラシルリワード」で"流通指定キャンペーン”を始めた理由は?
渡邉:キャンペーン対象の商品は、あらゆる流通で販売されています。ですが消費者の立場で考えると、欲しい商品があればまず「買える場所」を想起するはずです。つまり、商品がどこで買えるのかを明記したほうが消費者の利便性は高い。さらに、その流通を利用したことがなくても「お得に買えるなら」と来店する目的にもなり得ます。要は、“流通指定キャンペーン”は、流通の指名来店とブランドの指名買いが生まれやすいのです。
山口:花王さんの目的である「ウエルシアさんへの新規送客」は、まさに「流通の指名来店」を図るものです。
岩田:消費者の皆さまはドラッグストアを家からの近さといった利便性で選びますよね。「わざわざ遠いお店で買う」とはなりにくいはずです。そう考えても、「クラシルリテールプロモーション」では新規顧客の獲得を実現できています。
POSは前月比130% 値引き以外で「お得」を生みだす
──実際に行ったキャンペーンの結果はどうでしょうか。
山下:キャンペーン対象商品の「ビオレu ザ ボディ 泡タイプ」のPOSは前月比で約130%。また、ID-POSで見ても前月よりボディソープカテゴリーの新規顧客、またブランドの新規顧客も増えていたことがわかりました。花王としても結果に驚いています。
三澤:「クラシルリテールプロモーション」は単なる値引きとは違い、「店頭売価を下げずにお得に売れる」ことも嬉しいです。ブランドイメージを下げる心配もありません。
岩田:売価が下がらないということは、流通の利益も大きいということです。これも、今までのキャンペーンと「クラシルリテールプロモーション」の違う部分だと思いますね。キャンペーン参加者のアンケートからも、ウエルシア指定の未購入者の割合が、流通を指定しない未購入者より多くなりました。この施策自体でウエルシアの購入が促進されたことの表れです。
山下:花王としてもうひとつ良い結果だと思ったのは、ブランドスイッチを促せたことです。ボディソープは決まったブランドを継続購入するか、価格が安い商品を買うか、新商品の試し買いがメインの行動となります。しかしキャンペーンの結果、対象商品を初めて購入した参加者は65%。一律で店頭価格を下げずに、ブランドスイッチも促進できたのは、ありがたかったです。
──流通とメーカー、両者に利益があるのが"流通指定キャンペーン”なのですね。今後はどんな取り組みをしていきたいですか。
岩田:メーカーと連動して、キャンペーン参加者が必須で回答するアンケートの質を高めたいです。その設問の回答が、次の販促施策に繋げられるヒントになるかもしれません。新製品でなくとも、商品との出会いの場と購入のきっかけを提供してくれるのがクラシルリワード。その利点を存分に活用したいです。現に、花王さんが対象にした商品は数年前の発売。キャンペーンの切り口に迷っているブランドでもチャンスがあるのが「クラシルリテールプロモーション」だと思います。
山下:単発ではなく、継続的に効果を検証してウエルシアさんで花王の商品を買われる“生涯顧客”が増える施策を行いたいですね。来店前、買い物中、来店後の消費者データが追えるのも「クラシルリワード」の特長なので、今後も効率的な販促を実施していきたいです。
渡邉:「クラシルリテールプロモーション」が他社のサービスと異なるのは、来月のPOSを上げられる点です。これまでにないスピーディーな販促が実現できます。それに加えてCRMの精度を上げ、認知から購買まで一貫してサポートしていきます。
花王が「クラシルリワード」流通指定キャンペーンで成功したポイント
ウエルシア顧客の特徴と「クラシルリワード」の親和性に気づいた
ウエルシアには「ウエル活」と呼ばれるポイ活が存在。ポイントを使ってお得に買い物をする顧客が多いため、ポイントをはじめとしたリワードがもらえる「クラシルリワード」でのキャンペーン相性が良いと考えた。
流通の課題を理解し、送客を目的に、ウエルシアへの指名来店を狙った
「クラシルリワード」マストバイキャンペーンの“流通指定”では、キャンペーン参加条件となる特定の流通への送客を見込むことができる。今回花王は、ウエルシアへ指名来店する生活者を増やすべく施策を行った。参加者のアンケートからも、ウエルシア指定の未購入者の割合が、流通を指定しない未購入者より多くなり、施策自体でウエルシアの購入が促進された。
流通の売上も、ブランドイメージも下げることなく、消費者に「お得な買い物」を提供できた
「クラシルリワード」マストバイキャンペーンは、店頭価格を下げず、ポイントで還元するのも特長。メーカーにとっては過度な値引きでブランドイメージを下げる心配もない。さらに、流通の利益損失も少なく済むため、従来のキャンペーンとは違う方法で「お得感」を生み、販売促進につなげることができた。
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dely株式会社 クラシルリテール推進チーム
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