最終審査員総評
人が動くということが「販促コンペ」における何よりも大事な成果ですが、その瞬間そのタイミングにそう言われたら、そういう状況になったら、人は動いちゃうに違いないという瞬発モノから、ソーシャルなブランディング施策を通じてじわじわと行動喚起を促すものまで幅広い応募があった。どちらの方向性にしても、クリエイティブなアイデアがこめられた、かつリアリティのある質の高い企画と出会うことができた。販促のやり方はまだまだ多様なのだということを改めて認識し、時代とともに変わるブランディングの潮流を感じることができた。
今回の審査も学びの多いものでした。その過程で考えさせられたことがあります。それは、クライアントの価値をどう引き出すべきかという根源的な課題です。私なりの結論は、「無作為の作為」の重要性です。販促はもちろん、広告、ブランディングの基本はクライアントが気づいていない企業の価値を可視化することだと思います。その行為には企みが必要なのですが、それは超作為的でないといけないのでしょうか?今までにない企画をと肩に力を入れて生み出すのも良いですが、その会社の肩をそっと押せるような企画も顧客を動かします。無作為の作為を表現することにも十分に価値がある。だから来年はもっと肩の力を抜いた、無作為の作為を販促コンペでみたいなと思っています。
私が記録していた審査メモを見返すと、高く評価した企画には「心地良い」「無理がない」というワードが頻出していました。日々の若者との会話からは、コロナ禍明け以降の行動・コミュニケーション量の増加や、SNSの炎上・目まぐるしいバズに疲れている様子がうかがえます。若者に限らず、今の生活者のテンションを読み解くと、「疲れない・無理しない・心地良い」ことが、企画におけるキーワードになっていると思います。…