浅草や京都、そして日本茶風味のお菓子など、訪日客にとって「日本らしさ」が感じられる場所・モノが人気というイメージがある。しかし、この3年間で起こったのはコロナウイルスの世界的な感染拡大。パンデミックは訪日外国人観光客の価値観や人気の観光スポット、お土産などに変化を生んだのか。
アフターコロナに変わる日本の「人気」を日本交通公社の柿島あかね氏が解説する。
2020年以降、新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」)が世界中で流行したことに伴い、2019年まで好調に推移していた我が国のインバウンド市場は大きな影響を受けました。しかし3年の時を経て、ワクチン接種や感染によって免疫力が高まり、5月にはWHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言を終了し、現在は、世界の多くの国・地域でこれまでの生活を取り戻しつつある状況と言えるでしょう。
2023年、インバウンド市場 本格的な再始動へ
我が国では、2022年10月に水際対策(例:入国者数の上限撤廃、個人旅行の解禁、ビザ免除)が大幅に緩和されました。また、折からの円安も追い風となり、「訪日外国人消費動向調査」(観光庁)によれば2022年10~12月期には外国人旅行者による旅行消費額は新型コロナ流行以前の2019年同期の49%まで回復しています。この傾向は2023年も継続しており、2023年1~3月期には2019年同期の88%まで回復し、今年は一度フリーズ状態となった訪日インバウンド市場が本格的に再始動するタイミングになると考えられます。
このような状況においては、これまでの延長線上だけではなく、新型コロナの流行前後で外国人旅行者の価値観や消費環境などにどのような変化が生じているかを把握した上で、インバウンド需要を取り込んでいくことが重要ではないでしょうか。本稿ではこうした変化が今後の外国人旅行者の訪問スポットやモノ・サービスの購入にどう影響するかについて考察することとします。
コロナ禍の価値観の変化は訪問スポットにどう影響する?
訪日インバウンド市場が再始動するタイミングにおいては、訪日リピーターであってもその多くが3年ぶりの来訪ということもあり、新型コロナ流行以前に訪れていたスポットを再訪する可能性が高いと考えられます。そのため、現時点では人気スポットに大きな変化はないでしょう。
しかし今後、訪日インバウンド市場が本格的に回復した際の訪問スポットは、コロナ禍を経て変化した価値観が反映されることになるはずです。コロナ禍を経て変化した生活者の価値観には、「サステナブルな旅行に対する意識の高まり」など複数挙げられますが、本稿では誌面の関係から「アウトドアアクティビティへの関心の高まり」を例として取り上げます。
新型コロナの流行以降、旅行の際に感染リスクが高い場所や活動を避ける傾向が見られていました。新型コロナ流行下(2021年10月)に海外12地域の外国人を対象に実施した「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査 第3回新型コロナ影響度特別調査」で聴取した「日本で体験したいこと」の調査結果をみると、「繁華街の街歩き」や「温泉への入浴」の実施意向がコロナ流行以前の2019年調査と比べ低下しています(図1)。
しかし、新型コロナの流行が収束しつつある昨今、浅草や京都などの外国人旅行者に人気のあるスポットはかつての賑わいを取り戻しており、感染リスクが高い場所を避ける傾向は新型コロナ流行初期の一時的な傾向であると言えます。
一方、コロナ禍において感染リスクが低い場所で実施できる活動として人気を集めたことや、健康への関心の高まりから「アウトドアアクティビティ」、「自然や風景の見物」は2019年調査と比べ実施意向が上昇。特に「アウトドアアクティビティ」は日本での実施希望率も高くなっています(図1)。
アウトドアアクティビティについて、アジア・欧米豪の市場別、活動別に掘り下げて見てみると、アジアでは、スノーアクティビティやウォーキングの...