デジタルマーケティングにおいても、小売店のように顧客のマインドに沿った接客をすることが求められている。ネスレ日本マーケティング&コミュニケーションズ本部の中通康太氏が顧客体験を中心に据えた、オウンドメディア&ソーシャルメディア設計について解説する。
2023年で創業110周年を迎えるネスレ日本で、Digital戦略設計、Owned&SNS集客を担っています。私が顧客コミュニケーションを設計する中で大事な視点は2つあると考えています。
自社ビジネスへの貢献とお客さまの課題解決 2つの視点を持つ
結論から言うと、ものすごく当たり前の話になりますが、「自社ビジネスにとって意味のあること」、「お客さまの課題を解決するためのUXを提供すること」この2点に帰結すると思います。
まず、営利を目的としている企業である以上、「自社ビジネスにとって意味のないことをやろう」と唱える者は社内にいないと思います。何かしら会社のメリットになっていると信じている活動をし、我々は日々働いています。
次に、お客さまの課題を解決するUser Experience=体験を提供することはビジネスにおいて、とても本質的であると考えています。
ネスレの場合、創業者のアンリ・ネスレは19世紀のスイスにおいて、栄養不足による乳幼児の死亡率の高さに心を痛め、安全で栄養価の高い乳児用乳製品を研究開発していました。ある時、彼の身近に栄養不足で弱ってしまい、医者にも匙を投げられてしまった子どもがいたのですが、彼の作った乳児用乳製品でこの子どもが救われた、という逸話があります。この話が街中に伝わり、そこから会社を興したそうです。
これはつまりアンリ・ネスレの「誰かを、世の中を、こうしたい」といった想いが会社を作り、今のネスレを作っている、という歴史話ですが、こういった話はどんな会社にもあるはずです。売上を作るというのは、誰かの何かを解決することで対価をいただくということだ、と意識するのは日々の活動において大事な部分だと思います。逆に言うと誰の役にも立たないことはビジネスにはなりえない。
ここから言えることは、この2つは企業活動の最上位に近い概念であり、つまり社内のステークホルダーが同じ方向を向き、協力を得られ、“良い”施策を作りやすい考え方だと思います。
自社ビジネスの特性を見極め 施策を選ぶことが重要
「顧客志向」という言葉の本質を見失わないことが重要です。例えばお客さまの声をそのまま施策として取り入れることは、「お客さまの言うことを聞いている」のであって、「お客さまのことを考えた顧客志向」ではありません。
事実を理解し、お客さまのインサイトを考察し、本当に...