多くの常連客に愛されている街中のお店を訪問。顧客とのコミュニケーションや店頭販促の工夫を探ります。
初代の味を継承する2代目職人
著名人もひいき、要予約の銘品
SNSを見て遠方からも客が来店

蒲田の町はずれにある店の前に立つ黒田春美氏。訪問客がひっきりなしでやっと空いた数分間に撮影させてもらった。
JR蒲田駅から歩いて約10分、細いバス通り沿いの商店街にぽつんとあるのが「和菓子処 清野」。放送作家の小山薫堂がメディアでたびたび紹介したり、ミュージシャンの佐藤竹善や俳優の片桐はいりが直接買いに来る著名店だ。2022年にNHKで放送されたドラマ『正直不動産』で職人役の山﨑努がつくる菓子製作も担当した。
初代店主は長崎出身のカステラづくりの名職人だった。東京へ出て麻布の老舗店で和菓子作りも修行して1967年に蒲田で独立した。当初、昭和の昔に多かったような小売店数軒が入るマーケット内に店を構え、後に通り向いの今の場所に移った。特にカステラの人気が高く地元で知られた店となった。
その後、急逝した初代の後を継ぎ、娘の黒田春美氏が製造企画を担当している。元来お菓子を食べるのが好きなわけではなかったが、モノづくりが大の得意。OLとして会社に勤めた後、製菓学校に通って菓子作りを学んだ。
お店の人気トップ3は放し飼いで育った鶏の有精卵のみを使った「昔たまごのどらやき」と初代の味を継承する「長崎かすていら」、そして店の近くにある黒湯で有名な蒲田温泉にちなんだ波照間産黒糖100%の「蒲田温泉まんじゅう」。他にも和歌山の小ぶりなみかんを丸ごと一個中に入れこんだ...