メディア環境の細分化や情報環境の高度化が進み、生活者の選択肢がますます増えていく現代において、顧客への深い理解に裏打ちされた体験設計は必須のものとなった。本記事では、ミツカンと貝印による「メーカーにおけるSNSの活用方法」についてのセッションの様子をレポートする。
愛知県半田市で1804年に創業して以来、各種調味料の製造販売を手広く行ってきたMizkan。そして、岐阜県関市にて1908年の創業後、刃物製造業として代を重ねてきた貝印。どちらも百年単位の歴史を誇る老舗企業だが、積み重ねたものにあぐらをかくことなく、時代と環境の変化に合わせて、今日も絶えず改良を重ねている。食品と刃物、繋がりが近いようで遠い2社であるが、「積極的にSNSを活用している」という点において、貝印とミツカンは共通項を持っている。
ミツカンのCRM本部メディアPRチームに所属し、ミツカンの公式Instagramの立ち上げから運用を担当している平尾麻椰氏は、生活者との接点を増やしてエンゲージメントを強化することがSNS運用の目的だと語った。
「私が現在、Instagramとともに運用しているTwitterアカウントは、開設して4年目になります。開設当初は企業情報や当社の商品を使ったレシピ投稿などを、週3~4回ほど行っていました。手探りということもあり、投稿頻度が少なめだったのですが、2020年のコロナ禍による環境変化に合わせて、『生活者の方たちのために「今」、ミツカンにできることはなんだろう?』という思いから、『おうち時間に使えるレシピ投稿』を、平日は毎日行うようにシフトしていきました」(平尾氏)。
社内のレシピ開発チームを巻き込むことで安定した投稿コンテンツの量と質を確保した平尾氏は、それに加えて世の情勢を分析しているチーム、Webサイトチームを加えた「トレンド分析チーム」を編成して、「季節やトレンドなど、時節に合わせたニーズの高いレシピをスピード感もって投稿できる体制」を作り上げた。
「Twitterは表現できる文字数が限られているので、当初は『詳しく知りたい人はURLをクリックしてください』という形式でWebサイトに遷移いただいていました。ですが、Twitterの投稿はTwitter内で完結させた方が反応も良くなることに投稿しながら気づいたんです。また、レシピ投稿は『料理を作っていく工程』もあったほうが親切だと思い、最近では工程写真を含んだ投稿を...