多くの家庭で暮らしの必須アイテムになっている電子レンジ。象印マホービンではあえてレッドオーシャンのオーブンレンジ市場に参入した。どのような戦略で臨んだのか。象印マホービンでコミュニケーションを担当する今水陽一氏が解説する。
1918年にガラスマホービンの中瓶の製造からスタートした象印マホービン。現在では炊飯ジャー・電気ポットなど「調理家電」商品、ガラス・ステンレスマホービンを中心とした「リビング」商品に加え、空気清浄機などの「生活家電」商品の製造販売を手掛けています。
私は現在マーケティング部に所属していますが、食と暮らしに関わる様々な家電製品、家庭用品の国内のマーケティング領域におけるコミュニケーション活動を担っています。具体的には象印ブランド、および各製品カテゴリーにおける広告宣伝、プロモーション活動、SNS、オウンドメディアの運用管理です。
今回は新製品のオーブンレンジ「EVERINO(エブリノ)」の施策をもとに、自社の強みをどう考えて、どのような戦略でメディア活用について考えたのか、事例紹介としてお話をしたいと思います。
お客さまの不満解決をゴールに据えた製品開発が得意
私たちは「暮らしをつくる」という普遍的な企業理念を掲げ、日々の活動を行っています。ただ、多くの家庭で暮らしの必須アイテムになっている電子レンジまたはオーブンレンジという製品に関しては、当社の製品ライアップにありませんでした。一方これまで当社はホットプレートやオーブントースターなど、様々な調理家電で温度コントロールの技術をたくさん蓄積してきました。
当社の開発は「日常生活発想」を理念に掲げ、日常生活におけるお客さまの不満解決を課題とした製品開発を得意としています。オーブンレンジは専門性の高い製品ではあるのですが、当社だからこそ今の世の中に提案できるオーブンレンジができると考えて、今回開発に至りました。
電子レンジ、オーブンレンジカテゴリーにおいては、私たちは後発ブランドになりますが、後発ブランドだからこそ訴求できることをしっかりと考えて、ストーリー構築にこだわって準備を進めていきました。
今回の新製品は世の中のレンジ利用の不満を解決する明確なUSPがあると自負しています。そのような機能訴求もオーブンレンジ製品における信頼感や安心感、納得感、というものが素地になければ受け入れられない市場だと感じていました。名だたるブランドがひしめくカテゴリーの中で後発の当社の新製品を、お客さまが選ぶ理由、または必然性とは何か、これが今回のプロジェクトのキモだな、と感じていました。

「EVERINO(エブリノ)」は2022年9月1日に発売開始したばかり。最後発としてオーブンレンジ市場に参入した。
マーケティング部・開発サイド・営業サイドで認識を共有
施策立案をしていく上で、自分たちの強みまたは自分たちの状況を...