いまや企業だけでなく、個人の運用も多いECサイト。以前は商品の販売にのみ注力されてきたが、昨今ではそうした状況が変わってきている。商品を買う以外の機能として、ECサイトが担う役割とはどのようなものか。フラクタの南茂理恵氏が解説する。
ECサイトといえば、かつては自動販売機のように人を介さずに、実際の店舗に足を運ばず「オンラインで」買える、シンプルな「利便性」を満たすための意味合いが強いものでした。今でも同様の意味合いはありますが、近年は実際に商品を買うまでに至る検討の段階でも、ECサイトが一役買っていることは確実といえるでしょう。
ECサイトがコンバージョン以外に果たす役割
ECサイトは、例えばその商品がどんなものかをコンテンツを通じて知るのに利用されたり、オンライン販売のみの商品の場合は、その商品やECサイト自体が怪しくないかといった、最低限の品質を見極める判断材料になったりします。そしてオンラインとオフラインの垣根がなくなりはじめている今、ECサイトは全体の購入体験の中の、いちタッチポイントとして機能しはじめています。(図)
ひとつモノを買うにしても、世の中には選択肢があふれています。多くの場合、人は購入前にあらゆる角度から比較検討をするでしょう。例えば街に繰り出し、服を買うとします。似たようなデザイン・価格帯のトップスがあったとして、どのように決定を下すでしょうか。もちろん値段・デザインの良し悪しを判断するのもそうですが、店頭には接客スタッフがいて、多くの商品が動線に基づき陳列されているなど、商品以外の要素が存在しています。
他にも、コーディネートのイメージを湧かせたり、適切な接客があったり。そうした体験を経て、人は買い物をしているはずです。その時々の、時には言葉になっていない細かなニーズを満たし、「ぜひ(ここで)これを買いたい」と顧客から選ばれるひとつの切り札として、ショップ・ブランド固有の「顧客体験」があるといえます。
先ほど、ECサイトは今やオンライン・オフラインを総合したひとつの購入体験の中のいちタッチポイントとして機能しはじめている、と書きましたが、その中でECがどのような役割を担うかは設計次第で変わります。店舗に足を運ぶ場合同様、顧客は何かしらの興味を持ってECサイトにきています。そこで...