第14回「販促会議 企画コンペティション(販促コンペ)」で最終審査員を務めた嶋野裕介氏が、昨年の販促コンペで惜しくも受賞を逃したファイナリストの作品の中から選りすぐりの企画について解説する第2弾。来る第15回販促コンペに向けた必読の内容だ。
オリエン内容

Koala Sleep Japan
誰もがコアラマットレスで寝てみたくなるアイデア


#Koala OntheBeach
梶原大介(Twitter Japan)
山中 駿(Twitter Japan)
良かった点
とてもレベルの高い企画書です。課題の捉え方がシンプルに2点、その後にアイデアの着眼点&インサイトがコンパクトかつ納得性高くまとめられています。この整理力とまとめ方は今回の応募作の中でもかなり上位でした。アイデアの着地点を「ビーチ」と前半で言い切る強さもよいと思います。前半でここまでしっかりした土台がつくれると、後半のアイデアパートでもジャンプがしやすいので効果的な入り方です。
惜しい点
特にありません。あえて挙げるなら、1枚目が「間違ってはいないけど、発見や提案性も高くない」というところです。販促コンペは10枚しか使えないので、ここでもう一歩深掘りできるとベターでした。
良かった点
シンプルな構成ですが、絵づくりのレベルがとても高いです。基本の企画書力が高いです。特によかったのは3枚目。読み手としては「ビーチ」の砂、海水の商品へのリスクが頭によぎっていたところを「工夫したポイント」で丁寧かつ現実的にケアしているおかげで、提案自体への納得感が高まりました。ネガティブになりそうなポイントを早めにつぶしておくのも、質疑応答がない企画書のみで審査される販促コンペにおいては重要な戦略となります。
惜しい点
特にはありません。あえて欲をいうと「熱」が伝わるとベターです。企画書だけのコンペではプレゼンで熱意を上乗せすることができないため、大人しい企画書はその分少しだけ落ち着いて見えすぎる時があります(それが良い時もありますが)。人を動かす販促には、少し熱めの方がよいこともあります。
良かった点
とてもよいページだと思いました。SNSでの見え方、体験者数の計算、SNSでの想定反応を盛り込むことで、この企画がどのように世の中で広がっていくかを俯瞰して計算できています。かなり企画書が上手な方だと思います。むしろ私の方が勉強させていただきました。
惜しい点
企画書としては特に不足点はないと思います。ここでもあえて書くなら「熱」でしょうか。企画書がキレイすぎます。ビーチの参加者を集め、みんなが楽しむ企画なのに「楽しそうにしている人の様子」がないことがこの企画書を大人しく見せている(盛り上がるように見えづらい)のかもしれません。
全体講評
企画書の構成力・腕前は今回の応募作の中でもトップクラスだと思います。入り方・コアアイデア・ビジュアル・懸念点の払拭・SNSポイント・想定KPIの算出・世の中での広がり方⋯⋯。ここまで網羅できているのって、かなりすごいと思います。販促コンペに「企画書技術賞」があれば優勝してもおかしくない。
それでも入賞に至らなかった理由はなんなのか?いくつかあるうちで2つ挙げるとしたら、1つ目は「盛り上がる感」です。こういうイベント系の提案でもっとも大事なのが、人が訪れて、盛り上がり、商品が欲しくなる熱狂を生み出せるかどうか。その場の感情の昂りを感じさせる企画書であることが大事です。今回の企画書はパーツとしては完璧ですが、全てにおいて「人感」が足りないため落ち着いて見えてしまったという欠点がありました。
2つ目は「モードのズレ」です。「寝る」という行為からビーチを着眼点におきましたが、本当にビーチで寝ることと夜寝ることは同じでしょうか?
ビーチで横になるとは、泳いだ後の一休みだったりと、コアラマットレスが提供する「一日の疲れをしっかり取るための深い睡眠」とはやや違う性質のもの。こうした少しのズレが、最終評価につながったのかもしれません(繰り返しますが、企画書としては素晴らしいです)。

電通
クリエーティブディレクター・PRディレクター
嶋野裕介氏
マーケティング局、営業局を経て、クリエーティブ職に。PR起点で拡散させるコミュニケーションデザインを担当。最近の仕事は「BOSS×ウマ娘」「THE STRONG×スト2AR」「BOSS×ゴジラ」「#縄文式ビリビリ健康法」など。企画書は書くのも読むのも大好きです。いい企画書があれば読みたいです。