第14回「販促会議 企画コンペティション(販促コンペ)」で最終審査員を務めた嶋野裕介氏による新連載がスタート。2022年の販促コンペで惜しくも受賞を逃したファイナリストの作品の中から選りすぐりの企画について解説。来る第15回販促コンペに向けた必読の内容だ。
オリエン内容

Koala Sleep Japan
誰もがコアラマットレスで寝てみたくなるアイデア


TOWN NAP Station
菊地テスタ(博報堂)
佐藤秀平(三井住友カード)
齊藤さやか(早稲田大学)
良かった点
まず目を引くのがキーワードの設定とその見せ方のうまさです。企画書だけで判断されるコンペであることを想定し、文字サイズのメリハリや位置も含めて、読み手(審査員)としっかりコミュニケーションしようとしている企画書の好事例です。スマホの充電と結びつけた表現とCASEは、具体的な説明で分かりやすかったです。イメージイラストも企画書の視覚的理解を早めるために有効であり、かつこの企画書にちょうどいいものが使われていてとても良いと思いました。
惜しい点
特にありません。あえて挙げるなら「睡眠負債」について少しだけ説明などを下につけてあげても良かったかもしれません。
良かった点
それぞれシンプルな説明と分かりやすい絵があるので、コンペ用の企画書としてはかなり分かりやすくて良いと思います。
惜しい点
いくつかありますが一番のポイントは体験者の気持ちの設計です。「街中で本当に寝たいと思えるか」「時間経過と共にカーテンが上がるギミックは逆にプライバシーの観点からは嫌がられるのではないか」「NAPが60°の傾斜で本当にいいのか(妥当性の説明が欲しくなる)」など、企画書上はキレイだけど実際に街で人がやりたくなるかどうかの観点でのチェックがもっと欲しかったです。
良かった点
読後感がとてもいい締め方だと思います。企画の全体をシンプルに一言でまとめられています。
惜しい点
企画書をキレイに書きすぎかもしれません。広告企画ならこれでも良いのかもしれませんが、「販促」である以上は費用対効果・実現性・本当に購入まで結びつくのかの検討が求められます。この屋外施策で何人ぐらい参加できるか、そのうち何人ぐらいが実際の購入を検討するか。必ずしも正確な数字で出す必要はないのですが、その部分もしっかり検討されているのが伝わることが重要です。
全体講評
「概念先行型」の企画書だと思いました。書かれた方は相当経験と腕がある気がします。このタイプの企画書は課題の捉え方やコンセプト設計がとても上手です。読みやすく相手にも伝わりやすいから審査する側としては評価しやすい。一方で、肝心の企画のインサイトと細部の詰めが甘かったのが今回残念だったところ。商品とターゲットのことを本当に考えたときに、衆人監視の街中で、あの角度で寝ることが本当に商品トライアルにつながるのか?OOHの場所代や期間を考えると体験者数ベースのコスパが本当に良いのか?
販促コンペの審査員は事業会社・メディア・企画者が混在するなどとてもバランスが良いため、どこかに穴があると確実にその点を突かれると思って準備いただいた方が良いです(それは実務でも必ず活きるポイントです)。
企画書を上手につくる腕はすでにあるので、次は「自分が広告主だったらこの企画にお金を出してやるか」というシビアな視点で再チェックするともっと良くなるかもしれません。

電通
クリエーティブディレクター・PRディレクター
嶋野裕介氏
マーケティング局、営業局を経て、クリエーティブ職に。PR起点で拡散させるコミュニケーションデザインを担当。最近の仕事は「BOSS×ウマ娘」「THE STRONG×スト2AR」「BOSS×ゴジラ」「#縄文式ビリビリ健康法」など。企画書は書くのも読むのも大好きです。いい企画書あれば読みたいです。