物価上昇やコロナ禍による不況で、値引きや価格競争に対し代替策がなく、頭を悩ませる企業も多い。今回は、エムズコミュニケイト代表取締役岡田祐子氏が、消費者にとっても身近なお得感のある「ポイント」活用について、値引きに留まらない、エンタメ性の観点から解説する。
ポイントサービスはそもそも企業からお客さまに提供する「おまけ」です。おまけをしすぎると、次回の期待感が必要以上に高まります。おまけを多く出し続けると、お客さまはそれに慣れてしまい、それ以下になると「おまけが少なかった」と不満を生みかねません。つまり、「おまけ」程度で提供するにもかかわらず、「お得感」が生まれる必要があるということをまず認識していただきたいと思います。
消費者にとって身近なお得感の「ポイントサービス」
実際、お客さまに付与するポイントサービスの財源が一人当たり500円分あった場合、1年間に100円分を100Pずつ5回付与する場合と500円分を1回だけ付与する場合では、前者の方がポイントサービスに対する満足度が高いという調査結果も出ています(図1)。
熊本ラーメンチェーンの桂花ラーメンでは、会員アプリを1日1回立ち上げると、ログインポイントが貯まります。ちょっとした隙間時間に「あっ」と思ってワンクリック操作をすればポイントが貯まり、貯まったポイントはポイント数に応じて様々なトッピングに交換できます。まさにエンタメ性の高いお得感あるサービスの事例と言えます。
ポイントサービス イコール値引きではない
ポイントサービスのことを値引きの代替と考えているのであれば、ぜひ考え方を変えていただきたいと思います。たしかにポイントサービスは1ポイント1円でキャッシュとして値引きで使える場合もあります。dポイントやTポイントなどの共通ポイント、PayPayなど、各種キャッシュレスサービスに付与されるポイントサービスもそのような使い方がメインです。
しかし、顧客のアンケート結果からは値引きで使える使い方は利便性の評価は高いですが、貯めたポイントは「いろいろなものに」「好きに使える」ことが企業へのロイヤルティにつながることが分かっています。
また、自社の新商品のサンプルを交換商品にすることで、新商品への注目度を上げ、体験機会を提供することもできます。もちろん原価は額面以下ですので、1ポイント1円以下のコストで提供できる、コスパのよい施策とも言えます。
ポイントサービスは最新の行動経済学・心理学の研究からも、現実の財布とは違う「特別な」財布(メンタルアカウンティング)として捉えられています。ポイントサービスの「貯める楽しみ・使う喜び」は「へそくりの楽しみ・喜び」と置き換えて考えると分かりやすいのではないでしょうか。