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売上を伸ばすための基礎知識 販促の基本

新たな顧客体験の創出 バーチャルマーケットにみるメタバース販促

新 清士(HIKKY)

2021年10月、フェイスブックが、メタへと名前を変えてメタバースを中心とした企業へ変化したことが引き金となり、「メタバース」に高い注目が集まっている。本稿ではHIKKYの新 清士氏が販促における活用事例を踏まえ、メタバースを使った新たな顧客体験の創出などを解説する。

メタバースとは、もともとはSF小説で使われた造語で、現在では様々な定義が存在するものの、インターネット上に形成される「3Dグラフィックスを利用した複数人が参加可能な仮想空間」というあたりが一般的な定義です。現実世界の距離を意識することなくコミュニケーションを取ることができ、ゲームといったエンターテインメントや、コンサートや動画を一緒に見るといったソーシャル要素の強い活動、さらには、メタバース内では経済活動もできる余地が広がってきています。

HIKKYではメタバースを2つに分けて理解しています。VRSNSの「VRChat」に見られるような「Meta Quest 2」といった専用のVRデバイスを使用することでリッチな体験ができるハイエンドメタバースと、HIKKYで開発している「Vket Cloud」で実現しているスマートフォンから簡単にアクセスできることを重視したローエンドメタバースです。世界規模のバーチャル展示会「バーチャルマーケット(Vket)」はその2つのサービスに向けて、同時に展開を進めています。

100万人が参加する巨大イベントも

HIKKYが主催するVketは、2018年8月に、VRChat向けのイベントとしてスタートしました。メタバースには、ユーザーはアバターと呼ばれる自分の化身となる3Dモデルの姿で参加することになります。持ち主の個性を最も発揮しやすいのがアバターであり、着替えることができるため現実世界でのファッションに近い存在でもあります。

ところが、当時はユーザーが自分でアバターやその服の3Dモデルを一堂に会して展示するような場所がなかったのです。そこで「アバターをつくる人と使う人をつなげる出会いの場でありたい」という場所としてVketが実施されました。デジタルアパレルともいうべき分野は、メタバースではビジネスが成立しやすい分野なのです。

その後、Vketは夏と冬の年2回開催を基本として開催され、毎回全世界から100万人以上の来場者を得られるほどに成長しました。

一方で、Vketはメタバースへの進出に興味のある企業からも関心を集めるようになり、「Vket2022 Summer」では約60の企業出展が行われました。

主な出展企業は、JR西日本グループ、みずほ銀行、JVCケンウッド、ビームス、大丸松坂屋百貨店、ベルクなど、多様な業種からの参加をいただきました(図1)。現在では企業出展ブースは、多くのユーザーが楽しみに来場するVketの大きな目玉となっています。たとえるならば、コミックマーケットと博覧会がセットになったような場所が、定期的にメタバースに登場するようになったと言ってもいいでしょう。

図1 多様な企業がメタバースへの出展を行う

また、HIKKYでは世界100都市をメタバース化する「パラリアルワールドプロジェクト」というコンセプトを推進しています。現実の世界にある都市をそのまま完全に再現することを目指すのではなく、その都市のエッセンスとなる要素を抽出し、それをバーチャルな都市として再構成し、Vketの展示会場として展開してきています。過去には、秋葉原、渋谷を展開しており、「Vket2022 Summer」では、大阪、ニューヨークと展開してきました。企業ブースは基本的にパラリアルワールドの中に設営をするようにしています。

メタバースで求められる 広告の一工夫

メタバースの世界でも、ビジネス化においては、インターネットが実現した機能の大半のルールがそのまま通用します。広告とコマースです。ただし、2次元で構成されるWebに比べて大きく変化するのが、その顧客体験です。Vketは当然のことながら3次元の仮想空間で構成されているために、ユーザーの新しい体験価値を生み出すことで、これまでになかった様々な効果を生み出すことができるのです。この点が、メタバースへ多くの企業が期待を集める理由とも言えるでしょう。

ブランド価値を高めることが有効な広告では、立体的な空間を利用することで、非日常性を演出し、印象的な記憶を来場した...

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