アース製薬は2022年6月にアカウントを開設。何気ない日常の風景の投稿と思わせながら、実はその視点には秘密が隠されていた。開設から2カ月で3万フォロワーを突破したアカウントの主役はあの害虫だった。Instagramだけではなく、他のSNSにまで波及した話題のアカウントの仕掛けについて、アース製薬のマーケティング総合企画本部、小野里賢治氏と稲積大輔氏に聞いた。
「アース製薬っておもしろい、続きが見たい」を目指した
──公式Instagram開設の目的は。
小野里:ここ数年、TwitterやLINEを使ったプロモーションは展開していました。Twitterのフォロワー数は20万9000、LINEも29万を超える規模になっています。
当社では主要なコミュニケーションターゲットを20代から40代の女性に設定しています。新たなSNS施策として、この層に向けて影響力の強いInstagramにも挑戦してみようと考えたことがきっかけです。
Instagramは「映え」という言葉が象徴するように写真が中心です。そのプラットフォームの中で「アース製薬らしさ」をどう表現するのか、代理店とともに検討しました。単純に「映え」を狙ってきれいな商品画像を投稿するのは、Instagramマーケティングでは後発となる私たちにとっては物足りない。少し視点を変えて、「アース製薬っておもしろい」、「続きが見たい」と感じてもらえるアカウントにしようと考えました。
──結果的に「ゴキブリ視点の画像」を投稿することになりました。
小野里:当社は日用品も扱っていますが、虫ケア用品のイメージが強い企業です。ただ、画像として害虫を直接的に打ち出すことは受け入れられないとも思っていました。
稲積:夏前のアカウント開設を目指していたので、夏場はやはり虫ケア用品がメインになる。そうなるとゴキブリかハエ、蚊が候補になります。この中で一番向いていなさそうな虫を取り上げることで、InstagramだけではなくTwitterも含めて話題になる仕掛けができないかと考えました。その結果が「もしゴキブリがインスタグラマーだったら」という発想につながっています。これなら気づいたときの驚きや、友人にシェアしたくなる衝動も大きくなるのではないかと考えました。
チームで勉強会を実施し、生態を理解。投稿のつくり込みにこだわった
──アカウント運営でこだわったことは。
稲積:今回のチームは小野里と私、アース製薬からもう1名、代理店という編成で行っています。私はテレビCMなどプロモーション、広告宣伝、SNSの運用を担当しています。
私も代理店の担当者も、ゴキブリの生態については詳しくありません。そこで事前に「ゴキジェットプロ」の...