コロナ禍において、緊急事態宣言などの煽りを受け、苦戦を強いられる飲食店が増えている。そんな中、きめ細かな接客と鮮度抜群の料理で活況を呈する店が新橋にある。「やきとん ユカちゃん 麻布ふじ嶋 新橋店」の藤嶋由香氏に、愛される店の接客術について話を聞いた。
目配りと気配りの徹底 居心地よいお店づくりが人気の秘訣
──お店について教えてください。
当店は朝〆の豚のホルモンを串焼きにした、やきとんが自慢のお店です。新橋店を開業してから11年。コロナ禍でかなり厳しい時期を経験しましたが、おかげさまで応援してくださるお客さまも多く、メディアで取り上げられることも増えてきました。サラリーマンのお客さまや、最近では、当店のInstagramアカウント、仕込みの様子などを映したYouTubeチャンネルを観て来店くださる方もいらっしゃいます。
──お店を繁盛させる上で重視していることは。
お客さまに来てもらう要素は「味・サービス・価格」の3つだと思っていて、それぞれを高めることが重要だと思っています。接客の観点では、こちらから積極的に話しかけるということはしません。お声掛けの決まり文句があって、料理をお出しする際に「先ほどまで生きていた新鮮な○○です」と伝えるようにしています。そういった引きのある言葉で会話のきっかけをつくり、その反応で話したいのか、そうではないのかを判断するようにしています。
常連さんを敢えてつくろう、というわけではなく、リピートしてくださるような気持ちいいお店をつくろう、という気持ちが強いです。例えばグラスが空いた時、お客さまから呼ばれる前に声をかけるなど、「こんなことまで気を遣ってくれるんだ!」という瞬間を多く作ることに気を付けています。
当店では、ただ会話だけしにきて飲食をしない、いわゆる“常連さん”というような方は常連さんとは呼んでいなくて(笑)。しっかり飲んで食べてくださったり、混んできたら席をあけてくださったりといった方を常連さんと呼んでいます。ですから、他のお客さまを放っておいて無理やり常連さんと話したりはしません。お客さまがリピートしたくなるお店つくりを続けていたら、自然とそこに共感し、応援してくださる方が増えていきました。
現場で直接伝えることで、スタッフにも想いを伝播させる
──自身の考えを、スタッフに浸透させるにはどうしていますか。
スタッフには“お客さまに喜んでもらうために何ができるか...