小田急線の世田谷代田駅の駅前に、その温泉宿はある。
名前は「由縁別邸 代田」──。2020年秋にオープン。新宿から電車で10分のアクセスの良さと、モダンで落ち着きのあるたたずまいで、若い女性たちに大人気。大浴場の露天風呂は、箱根・芦ノ湖温泉の源泉を運んでくるという。
際立つのは、ロケーションの良さ。小田急線の地下化によって線路跡に誕生した「下北線路街」の一角に位置し、風情のある小路を通って、宿の入口を目指す演出が施されている。周囲は閑静な住宅街で、驚くほど静か。下北沢まで歩いていける立地も魅力だ。
それにしても──同旅館のオープンは、コロナ禍の真っ只中。単純に宿泊業として考えたら、その船出は最悪のタイミングだったはず。しかし、コロナ禍ならではの人々の生活習慣の変化が、思わぬ追い風になる。
1つは、「マイクロツーリズム」が脚光を浴びたこと。コロナ禍で県境をまたいだ移動が控えられ...
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