いつの時代もギフトはコミュニケーションの1つとして存在してきたが、その性質は時代と共に変化している。ブランド体験のきっかけを生むギフト戦略をどのように行うべきか。エビスビールのコミュニケーションを担当する福吉敬氏が解説する。
お世話になった人から身近な人へ ギフトの贈り先に変化
ギフトの変遷とブランド体験のきっかけを生むギフト戦略についてお話したいと思います。「モノからコトへ」と言われて久しいですが、ギフトの性質も2015年ぐらいから大きく変化をしています。モノを贈るというよりは、コト消費として体験重視に変わっていきました。そこで、エビスブランドとしてもコト消費をやってみようと、「ヱビスビール記念館での特別な体験を送るギフト」というギフト企画を実行しました。
それは「お中元お歳暮のような会社の上司やお世話になった人へフォーマルなギフトを贈る」ことから、「自分に近しい人たちにこんな体験をしてほしいと、相手の気持ちを想像しながら贈りものをする」というギフトの在り方への挑戦でもありました。ただ、このコトギフトの潮流はコロナ禍で社会全体が行動制限を受けざるを得ない状況下で縮小気味だと感じています。
そして、コロナ禍により起きたのが、モノへの回帰です。「お中元お歳暮に代表されるモノを贈る習慣から、体験重視のコトを贈り、そしてまたモノを贈る」ようになりました。
ただし同じモノを贈る行為でも前者はフォーマルであり、後者は身近な人を思うパーソナルなギフトという点で違いがあります。コロナ禍では、移動することができず帰省も控えざるをえなかったので、せめて直接会えない祖父母や親しい人にギフトとしてのモノを贈り、思いを伝えたいという、コミュニケーションのツールとしての役割に変化しつつあります。
また、「お世話になった人へのギフトから身近な人へ贈り先が変化」してきたのと同時に、贈答用ギフトを自分に贈ることが増えたのも注目すべき現象です。
ブランドコミュニケーションはパーソナルとツールとしての役割に注目
このように、ギフトというのは時代によって変化していくもので、私たちのブランドコミュニケーションも現状に対応するように変えていっています。ただしフォーマルなギフトも依然として需要はあるので、当社では2種類のコミュニケーションを行っています。
新しいブランドコミュニケーションの特長は2点です。1つはブランドコミュニケーションを「フォーマルからパーソナル」へ変化させていっている点です。フォーマルのコミュニケーションはモノが主役です。「エビスブランドはいいものだから大切なあの人に贈るときエビスビールを贈りたい」とモノを見せていくというコミュニケーションです。
一方、最近のブランドサイトでは人を主役にしています。「父親などギフトを贈りたい相手に直接届けに行き、一緒にビールを飲み食事を楽しむというような、人と人の...