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ゼロから始める リテンションのポイント

ゼロから始めるリテンションのポイント

大坂祐希枝氏(カスタマーサクセス推進協会)

新規顧客の獲得にはかなりの時間や費用をかけているが、長く自社を支えてくれる優良顧客の獲得がうまくいかない。自社ブランドを選択してもらったうえでリテンション(維持)につなげるにはどうしたらよいのか?視聴契約の解約増加により顧客減少に悩むWOWOWを、12年連続顧客増加に導いたマーケティングコンサルタントの大坂祐希枝氏が解説する。

私のリテンションマーケティングとの出会いは、有料放送のWOWOWの加入世帯数が解約激増によって4年連続で減少した時期のことでした。当時の社長に呼ばれ「解約防止の専門部署を作る。君を部長にするから、明日から1件でも解約を止めろ」と言われて「無理!」と強く思ったのをよく覚えています。なぜなら、私は放送の仕事の経験しかないマーケティングの素人でしたし、会社にはマーケティングに使える顧客データが無いに等しい状態だったからです。

「ゼロ」から最初に始めたこと

そんな「ゼロ」からスタートしたリテンションマーケティングでしたが結果として解約率を低下させることができ、加入世帯数は4年連続減少から12年連続増加にV字回復を図ることができました(図1)。成功の鍵は何だったのか。ここでは視点と進め方のポイントをお伝えします。

図1 WOWOW加入世帯数(2001年度〜2018年度)

加入世帯数が4年連続で減少した時期、社内では、ともかく新規加入を獲得しようと、無料お試し期間を作ったりプレゼントを実施したりしていました。解約が増加して加入世帯数が減少した分を、なんとか次の新規獲得で埋めようと躍起になっていたのです。その結果、新規獲得は増えた時期もありましたが、解約がそれ以上に増えたために、結局加入世帯数は減少を続けてしまいました(図2)

図2 4年連続顧客減少期の新規加入、解約、正味

解約防止専門部署が最初に手掛けたのは、顧客の解約が増加するタイミングやボリュームと、実施していた施策や外的環境の変化の関係性を導き出すことでした。初期にはデータの作成や分析はExcelを使い、ゼロから全て社内で実施しました。地味で大変な作業でしたが、この作業から始めて自社の顧客を深く理解できたことが、その後の成功に繋がったと私は考えています。

因果関係を発見し、構造を変える

リテンションは、すでに解約意向を持ってしまった顧客を目先の提案で...

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