セミナーなどで、よく「どうしたらPDCAをうまく回せますか?」と質問を受けます。回さなければいけないと焦るほど、うまく回っていない実情に困惑する。そんな問題意識をお持ちの方も多いのではないでしょうか。これから3回に分けて、その対処法をお話ししていきます。第1回は、そもそも「PDCA」とは何か、という解説です。

イラスト/山崎綾子
むかし、あるところに一軒の酒屋さんがありました。住宅街なので夜には早々と店を閉め、日曜日は休業。お酒以外のつまみ類などちょっとした食品も置いていますが、品揃えはお酒も含めて全部、地元の問屋さんにお任せです。毎日の売上総額は記録していますが、お酒以外の商品の在庫管理は、年に2回の「棚卸し」のタイミングだけ。そこで初めて、問屋さんに勧められてたくさん仕入れた缶詰が、全然売れていなかったことを知り、あわてて割引セールを計画します。⋯⋯
これは、40〜50年前にはごく普通にあった本当の話です。今から思えばかなり原始的なマネジメントですが、それでも何とかなっていたのは土地・店舗が自宅兼用で、顧客の数も売上も安定していたからでしょう。
こうした小売業のマネジメントを根本的に革新したのがセブン‐イレブンです。元会長の鈴木敏文氏は、「日々、仮説検証だ」と言いました。要は、世の中の変化の中で我が店が生き残るためには、気温や生活の変化に基づく最適品揃えを「計画」し、「仕入れ」・「陳列」し、何個売れたか、なぜ計画通り売れなかったかを「分析」して、翌日の仕入れに反映させ売上を改善する。こういったマネジメントサイクルを日々、繰り返すしかないと考えたのです。これがまさに「PDCA」サイクルです。
「PDCA」サイクルという用語がビジネスシーンで広く使われるようになったのは1990年代以降、ちょうどISO9001(品質管理の国際規格)が「PDCA」サイクルを標準的手順として定めた頃からだと記憶しています。日本の工場生産工程の品質管理では60年代から「PDCA」が使用されていましたが、経営用語としては、「科学的管理法」で有名なフレデリック・テイラーの「PLAN、DO、SEE」という考え方を受け継いだ「PDS」サイクルの方が一般的でした。
それが「S」プロセスを「C〜A」に分別した「PDCA」に変わったのは、経営管理手法の進化論といえるでしょう(図)。
「サイクル」として回し続ける
セブン‐イレブンの成功は...