味の素冷凍食品が2017年に開催した「ギョーザステーション」。普段使われていない両国駅の3番線ホームで「ギョーザ」を焼いて食べられるスタイルで好評を博した。「ギョーザステーション」は2019年まで開催され、コロナ禍により2020年はオンラインでの開催となった。企画の立ち上げを担当したマーケティング本部の多田裕之介氏に、企画実現までの道のりを取材した。
45周年を機にインサイトを深堀り
2017年に味の素「ギョーザ」が45周年を迎えるにあたり、何か大きなキャンペーンをしたいというのが企画のスタートになりました。
当社の「ギョーザ」は「油・水なし」で焼ける技術を開発し、誰でも簡単にパリッとした羽根のおいしい餃子が焼けるということを特徴としています。
周年を迎えるにあたり、消費者インサイト調査をしたところ、多くの声として「おいしい」といった意見がまずは出ていたのですが、さらに深堀りしたところ、また違った商品の訴求点が見えてきました。それは、調理する人にとってきれいに焼けることが「気持ちよい」、「爽快感がある」といったインサイトでした。そうした体験を多くの人に味わって欲しいという想いから、周年に合わせた企画を行うことになりました。
“幻のホーム”でキャンペーンを
では、そうした気持ち良さや爽快感を味わう体験をいかにしてもらうか、代理店さんに入ってもらい意見出しを行いました。難航したのは場所の選定です。集客が見込めて象徴的な場所がよいと考え、フラグシップとなる大型の広場など、様々な意見が出ましたが、どれもピンとくるものがありませんでした。そうした中、最後に出てきた候補が「両国駅3番線ホーム」でした。
JR両国駅の3番線ホームは、1日1回臨時列車が発着する以外は使用されておらず、普段はコンコースにつながっている階段も閉鎖されています。そのため傍からみると何に使われているかわからない“幻のホーム”と呼ばれていました。
代理店さんも最終候補が選ばれるとは思っていなかったようですが、私たちは「正にそれだ!」というように全員の意見が一致。両国駅で行う運びになりました。
当時は駅のホームでこうしたイベントを行うことはまだ検証段階で、実際に使用できるかは企画段階ではわからなかったのですが、「ぜひここでやりたい」という熱い想いを伝え、どうにか使用許諾を得ることができました。
実際にロケハンで3番線ホームに行ってみると、1、2番線ホームからは丸見えで、予想以上に目立つ場所だとわかり、そのときにはメンバー全員が「もうここしかない」という気持ちになっていました。周年ということもあり、楽しくやりたいという意見や「社内のエンゲージメントも高まるのでは?」といった声もあり、ちょっと突飛かもしれないけどやってみようという社内合意も得られました。
思い切った判断が成功要因
「ギョーザステーション」は各テーブルにガスコンロとフライパンを用意し、お客さまご自身で「ギョーザ」を焼いて召し上がって...