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旬を演出する8つの注目ワード

「チル」Z世代とのコミュニケーションの鍵は居心地のよさと肯定

原田 曜平氏

「今年の新語2021」で「チルい」が大賞を受賞した。「チル」という言葉は非常に多義的だが、Z世代を理解する上で重要なキーワードだ。Z世代の特徴とプロモーションについて考える際のヒントをマーケティングアナリストの原田 曜平氏が解説する。

三省堂の「今年の新語2021」で「チルい」という言葉が大賞を受賞したので、メディアなどでも「チル」を目にされた方が多いのではないでしょうか。もともとは音楽分野の「チルアウト(chill−out)」からきており、「まったりする」という意味です。イメージとしてはデンマーク語のヒュッゲ(hygee)に近いです。日照時間が短く、家にいる時間が長い北欧では家で快適に過ごすという発想が広がっており、ヒュッゲというのは居心地のよい時間・空間のことを指します。

「チル」はただ「まったりすること」を指すのではなく、居心地のよい空間や時間を楽しむことにニュアンスとしては近い。

Z世代とのコミュニケーション

2020年に上梓した拙著『Z世代』でZ世代を読み解くひとつのキーワードとして「チル」を挙げました。成熟した日本社会、働き方改革の風潮でそんなに働くことを頑張らなくてもよい、それよりは居心地のよい時間を楽しむ。そうした背景から、若者たちが「今チルってます」というような和製英語を使うようになりました。

Z世代のプロモーションについて考える際、幾つかヒントになるような表現をお伝えします。

①ママ擬人化

商品サービスを「イマドキ」の母親のように描く

Z世代の母と子の関係は密接になっており、Z世代にとって「母親」の存在はこれまでに比べて大きくなっています。過度に干渉せず、自分の味方として見守ってくれる「イマドキの母親」に居心地のよさを感じる人が多いです。

例えば洗剤のテレビCMでは「いつもそばにいる」「君のこと見てる」というBGMの歌詞、生活の中で商品が映されることから「何気ない日常も見守ってくれている存在」として描かれています。

②モアオフ

「オフをよりオフにする様子」を描く

コロナ禍により家にいる機会も多くなり、例えば自宅のソファでくつろぐ、という表現ではオフ感が感じられなくなっています。従来よりももっとオフ感を描かないとリラックスしたときに使う商品と思われなくなっています。

例えば、ソファでくつろいでアイクスリームを食べるだけではなく、もっと贅沢にお風呂に入りながら食べるシーンなどを描くことでよりオフ感が伝わります。

③逃避肯定

「無理はしたくない」Z世代の気持ちを肯定する

Z世代は「嫌なことに無理して耐え、頑張る」といったことに慣れておらず、「嫌なものは嫌」「マイペースに生きていきたい」と考えます。

例えば風邪薬の広告が「風邪のときはお家で休もう」といった表現に代わり、Z世代の無理はしたくないし、それを肯定してほしいというインサイトに応えています。

④怠惰な暮らし>丁寧な暮らし

「怠惰な暮らし」を肯定する

ここ数年は「丁寧な暮らし」がネット上でトレンドでしたが、それに息苦しさを感じるようになっています。その結果、真逆にある「怠惰な暮らし」が肯定的に捉えられるようになりました。

例えば、インスタント食品のInstagram広告では「映えなくてなんかもう良くない?」というセリフと共にペットボトルに直接口をつけて水を飲んだり、インスタント食品を食べたりと映えない日常を送る様子が描かれました。

⑤ボケ完結

「ツッコミオチ」は省く

SNSやYouTubeのコメントなどで、批判的な意見を見ることにZ世代は辟易しています。

アンチコメントの方がリプライも多く、目にする機会も多いからです。そのため、ツッコミ(=否定)するオチよりも、ツッコミのない温かい状況を求める傾向にあります。

例えば、飲料メーカーのテレビCMでペットボトルの緑茶とごま油を間違えてしまうという、あるあるではない間違いを紹介し、ツッコミがないまま色が変わったという商品紹介につなげています。こうしたツッコミ不在に、優しさを感じたりします。

⑥前提肯定

「競合・相反する価値観」を肯定する

Z世代は、SNS上での争いや日々の炎上を目にしているので、相手の価値観を否定せず、衝突を避けられるコミュニケーションを求めています。そのため、競合商品・企業を否定しないコミュニケーションに対して好感を抱きます。

例えば、お米のテレビCMでは日本のお米でおいしくないものはないと全般を褒めた後に、あえて言うなら○○が好きというように商品の良さを話しています。

⑦そのまま肯定

「ありのまま」を肯定する

身の回りにプチインフルエンサーが増えたことで、自分自身では何もできないことに劣等感やもどかしさをZ世代は感じています。

そのため、ありのままの自分を肯定してほしいというインサイトがあります。

例えば、ファストフードのテレビCMでは自分自身を褒める大切さや自分へのご褒美としての商品を描く構成となっています。

Z世代はSNSでプチ承認欲求は満たされるが、自分に自信がないという面を持ち、ありのままを肯定してほしいというインサイトがある。

表面ではなく インサイトを捉える

Z世代は自分をとても発信しているので自信満々かと思いきや、昔と比べると自己肯定感が低くなっているという話しもあります。SNSでプチ自己承認欲求は満たせるが、すごく不安定で自分に自信がないという面もあります。ただ若者言葉を使った表現だけでは、Z世代には響きません。きちんとインサイトを捉えることが重要だと思います。



マーケティングアナリスト
原田曜平(はらだ・ようへい)氏

1977年東京都まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが市場を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・Tiktokにハマるのか?』(光文社新書)などがある。

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