様々な場面で企業はデータを取得できるようになった。一方、データを分析し活用できる人材は決して多くない。こうした状況でデータを利活用できる人材をどう育てるのか。東日本旅客鉄道の渋谷直正氏が解説する。
必要なのは「シチズンデータサイエンティスト」
技術革新によって、様々なルートから顧客データを集めることが可能となりました。しかし、膨大なデータを蓄積したのはいいものの、活用方法が今ひとつわからない方も多くいらっしゃると思います。
まず、キーワードとして知っておいてほしいのが、「シチズンデータサイエンティスト」という言葉です。シチズンデータサイエンティストとは、「データ分析の専門家ではないけれど、分析ツールを使いこなして、自分で分析ができるビジネスパーソン」のことを指します。
シチズンデータサイエンティストになるのは、とてもハードルが高いことのように感じられるかもしれません。しかし、データ分析を料理に例えると、「腕の良いコックさん」と「素人」にわけられます。
何が一番違うのかというと、経験やひらめき、アイデアや感性です。おいしい料理をつくるには、「この食材はこういう調理をすればおいしくなるだろう」といった、経験に裏打ちされたひらめきが最も重要になるわけです。逆に考えると、プロが選んでくれた良質な食材を、きちんとレシピに従ってつくれば、素人がやってもそれなりの料理ができ上がります。データ分析も同じで、経験や業務知識に基づいて適切な分析課題を見つけ出す発想力が何よりも必要なのです。
プログラミングや分析手法を勉強することもムダではありませんが、昨今では優れたツールも増えてきています。Excelが広く普及したように、いずれは「分析ツールを使えば、誰でも簡単に分析ができる」という時代が来るでしょう。そんな中で他社との差別化ができるのは、「分析すべき問題を見つけて、必要なデータを準備する」といったひらめきの部分だと、私は感じています。そういう人材が増えることが、結果として企業の競争源泉になるのです。
万能の人材を目指す前に、「まずはここまで」
データ分析用のツールは数多くありますが、大きく括ると、「BI(ビジネスインテリジェンス)ツール」と「BA(ビジネスアナリティクス)ツール」の2つに分けることができます。このうち、BIツールは集計や可視化ができ、誰にでも簡単に使うことができます。それに比べて、BAツールは専門家向けのもので、予測分析や最適化といった非常に高度な分析が可能です。
しかし、最近ではツールの質が上がってきており、専門家向けと言われたBAツールでも、コードを打ち込む必要がなく、マウスで直感的に操作ができるものも出てきました。まだまだ専門家の支援が必要な場面は...