新規顧客の獲得はビジネスの成長に欠かせない要素。しかし、ゼロから開拓するからこそ何から考えればいいのか悩むことも。本稿では既存顧客との違いから、獲得へのプロセスまで、段階を踏んで紹介する。
新規顧客獲得を考える場合、まず、新規顧客と既存顧客との違いについて理解する必要があります。なぜなら、新規顧客を増やす方法と既存顧客のリピートを増やす方法は異なるからです。販売促進活動に取り組む際には、新規顧客と既存顧客の違いをしっかりと理解して、適切な販売促進策を検討、実施するようにしましょう。
新規顧客の最大の特徴は「当店のことを知らない」、もしくは「興味が無い」ということがあります。それに対して既存顧客は「当店のことを知っている」という特徴があります。そのため、新規顧客の獲得については「当店のことを知ってもらう」ことが最大のポイントになります。
また、新規顧客は当店を利用していないので「当店での購買余力が大きい」という特徴があります。それに対して、既存顧客は既に当店で買い物をしているので「当店での購買余力が小さい」という特徴があります。仮にユーザーが平均100回どこかの店舗を利用するとした場合、既に当店を利用している既存顧客が当店を30回利用しているとしたら、残り70回しか機会が無いのに対し、当店を利用していない新規顧客はまるまる100回が機会として残っています。
また、新規顧客と既存顧客の違いを理解する考え方として、「アンゾフの成長マトリクス」が参考になります。アンゾフの成長マトリクスでは、「製品やサービス」「対象とする市場」をそれぞれ「新規」「既存」に分けて、企業の成長戦略を考えます。この成長マトリクスを小売業&サービス業にアレンジすると図1のようになります。
既存顧客向けには、「既存顧客の来店回数や利用頻度を増やす取り組み」、もしくは「今まで扱っていない新しい商品を販売する取り組み」が有効になりますが、新規顧客向けには「今まで当店を利用していない人に来店してもらう取り組み」が有効になります。このように、既存顧客と新規顧客を増やす取り組みに違いがあると理解しておきましょう。
新規顧客獲得が必要なワケ
先ほどの図1からも読み解けるように、実は「新規顧客の獲得」よりも、「既存顧客の利用促進」や「既存顧客への新商品などの展開」の方が取り組みとしては容易になります。それは、既存顧客とは程度の差はあれども信頼関係が構築されているのに対し、新規顧客とは信頼関係が構築されていないからです。そのため、新規顧客の獲得には相当の努力を要することになります。
それでも新規顧客の獲得が必要なワケとしては、大きく3つが考えられます。1つは、「今後、日本の人口が必ず減少する」ということがあります。足元の商圏によって差異はありますが、既存顧客だけで商売していれば、いずれは顧客が枯渇することになります。次に、「既存顧客を維持する取り組みはどこの店も取り組んでいる」ことがあります。
FSP(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)に代表されるように、既存顧客を重視する小売業は多いことから、既存顧客が少なく、後発であればあるだけ、規模が小さいほど不利になり、他店と同じことに取り組んでいるだけでは差が付かず、逆に引き離されてしまいます。そのため、既存顧客を重視するのと同様、新規顧客の獲得に取り組む必要性は高いと言えます。
3つ目は、「新規顧客は流動性が高く取り込むチャンスがある」ということです。業種にもよりますが、新規顧客には「若いユーザー層」が多い特徴があります。誰しも「初めて店舗を利用する」というタイミングは訪れますが、その際、「初めてメガネを買う」「初めて携帯電話を買う」「初めて世帯の買い物をする」「初めてマッサージに行く」というタイミングは年齢が若い時が多いのではないでしょうか?
もちろん、全てではありませんが初めての買い物をする人の中には若いユーザー層は一定の割合で存在しています。若いユーザー層は購買行動のパターンが確立していないので、早めに店舗を利用していただいて、刷り込みを行うことができれば、既存顧客化する可能性は高くなります。競合店より先に「未来の顧客を抑える」という意味でも、新規顧客獲得は重要と言えるでしょう。
新規顧客獲得のプロセス
①新規顧客となるターゲット候補を選定する
新規顧客を獲得する際、最初に取り組むべきことは「ターゲット候補」の選定です。例としては、「当店への来店者が少ないエリアのユーザー」「当店に来店していない属性のユーザー」「当店の固有の商品やサービスに...