令和2年、3年の改正個人情報保護法により、個人の権利利益を守る一方で、データの利活用を推進するための環境が整いつつある。どのような点に注意すべきか、日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の坂下氏が解説する。
ビッグデータ時代の個人情報保護
令和2年、3年と改正が行われた個人情報保護法について、マーケティングやコミュニケーションに関連するポイントに絞ってご紹介いたします。
今回の改正点は、大きく5つに分かれています(図表1)。
まずは、「個人の権利利益の保護」です。従来は業法として個人情報の保護を進めていましたが、今回は個人の権利利益を保護するためにどうするか、という部分が新しく法定されました。
次に、「技術革新の成果による保護と活用の強化」ということで、AIやIoTなど、様々な技術が進展する中でどのように個人情報を使うか、という点について、配慮事項が定められています。
また、「国際的な制度調和や連携」についても規定が盛り込まれました。これは、GDPR、EUとの十分性認定を踏まえた個人情報の取り扱いに関連する部分です。
さらに、「越境データの流通増大に伴う、新たなリスクへの対応」ということで、サプライチェーンの中で海外に個人情報を移転する際の対象者への情報提供に関する規定も盛り込まれました。
最後に、「AI・ビッグデータ時代の対応」ということで、データの利活用についても、いくつか法定が行われました。
令和4年4月1日の改正法の全面施行に向けて、準備が進んでいます。関連WebサイトにてQ&Aが公表されていますので、ご関心のある方はご覧になることをお勧めします。
仮名加工情報の活用範囲に注意
今回の改正の中で、マーケティング業界に最も関係してくるのは、「仮名加工情報」についての部分だと思います。仮名加工情報とは、匿名加工情報と異なる加工情報のことです。今回の改正で、個人から情報の開示や利用停止の請求が可能となるよう権利が拡充されました。一方、イノベーションを創出する観点から、「仮名加工情報は開示・利用停止等の請求の対象とならない」という指針が政府によって定められました。
簡単に言うと、「個人の権利と安全は守りつつ、データの利活用は止めないようにしよう」という観点から、情報開示すべき点と利活用すべき点の線引きがされた、ということです。この線引きにより、新たな目的でのデータ分析や委託、データの共同利用も可能となりました。しかし、守るべきルールもいくつか増えましたので、それらについて解説します。
まず、仮名加工情報の加工基準についてですが...