顧客理解とDX。現代のマーケティング活動には欠かせない2つの要素だが、両者の関係に親和性を感じる人は少ない。なぜ、DXに顧客理解が必要なのか。パルコの安藤彩子氏が解説する。
DXにおけるCRM戦略の重要性
「パルコが推進する顧客理解とDX戦略」というテーマで、「DXとは何か、そこになぜ顧客理解が必要なのか。そしてパルコはどのように取り組んでいくのか」をご紹介します。
ご存じの方も多いと思いますが、パルコは商業デベロッパーとして小売業と不動産のハイブリッド型モデルを構築し、展開している企業です。
私の役割は、ショッピングセンター(以下、SC事業)の中におけるデジタル推進。具体的にはSC事業のDX戦略、CRM戦略推進のための環境構築、データ分析・活用、自社ポイントサービス「PARCOポイント」や自社アプリQRコード決裁「ポケパル払い」の仕組み構築です。デジタル推進部は他にアプリ開発、オンラインストアの開発、XRなどの活用も行っています。
顧客理解なくして、DXなし
本題に入ります。なぜDXに顧客理解が必要なのでしょうか。まず経済産業省によるDX推進ガイドラインにおけるDXの定義を読んでみましょう(図表1)。
私がこの中で重要なワードだと思うのは、①「変化に対応」②「顧客や社会のニーズを基に」③「ビジネスモデルを変革する」④「組織、プロセス、企業文化、風土を変革」⑤「競争上の優位性を確立すること」の5点です。
私はこの5つのうち、「変化に対応」と「顧客や社会のニーズを基に」という部分が、顧客理解だと考えています。
また「組織、プロセス、企業文化、風土を変革」とありますが、その前段には「データとデジタル技術を活用して—」とがあります。つまり、顧客理解をするには、社内でのデータドリブンなカルチャーの醸成が必要になってくるということです。
以上のことから私は、DXとは「デジタル技術を活用して顧客を理解し、顧客志向でサービスやビジネスモデルの変革を目指すこと」だと理解しています。DXは手段ではなくて、変革を目的とした活動であり、何よりもDXは顧客や社会に寄り添うことが求められているのです。
そして、今私が向き合っているパルコのDXは「デジタルやデータを活用し、顧客志向でビジネスやサービスを再構築し、パルコを楽しむお客さまの...