当然だが、企画を立てる前には必ず与件・課題の整理そして目的の設定が必要だ。ここが曖昧なままでは、企画は立てられない。では、どのように考えればよいのだろうか。ポイントについて筆者が解説する。
企画を立てる前に必要なプロセスは「クライアント要望を組み立てる(社内であれば上司)」です。要望を組み立てられれば、与件・課題の整理、目的の設定は完了します。なぜなら、クライアントの「言っているコト」と「望んでいるコト」は異なるからです。
クライアントが言語化した情報は顕在化した症状の一部です。患者が医者に「頭が痛い」と訴えるようなものです。医者が頭痛の原因を診察して、治療方針とお薬を提案するように、企画者は顕在化したクライアント症状をベースに「現状の仕組」を診察して、クライアント要望を組み立てて、企画を提案します。
つまりクライアントが主張する症状の原因を診察して、適切な治療方針と薬を提供するのが企画提案になります。企画を立てる前に必要なプロセスは、クライアントが主張する症状を生んだ現状の仕組を診察して、クライアント要望を組み立てることです。
6つのパーツでクライアント要望は完成
クライアント要望を組み立てるのに、必要なパーツは次の6つです。
●目的
●課題
●ターゲット
●スケジュール
●予算
●コミュニケーションモデル
このパーツを揃えることができれば、組み立て完了です。
パーツを揃えるために僕は次の順番で診察します。
①企画の目的を仮設定
②課題の特定
③企画のターゲットを設定
④企画の実施時期を設定
⑤予算の設定
⑥想定コミュニケーションモデルの設定
⑦目的の再設定
それぞれの内容を簡単に共有していきます。
①企画の目的を仮設定
クライアントから共有された「目的っぽいもの」をそのまま目的として仮設定します。ポイントは全体の診察が終わった後に上書きすることです。
②課題の特定
課題の特定は診察のメインです。課題の定義は様々ですが、僕の定義は次の通りです。「悪い結果(=顕在化した症状)を生んだ悪い仕組を良い仕組に変えること」です。クライアントが言語化した情報をベースに、現状の仕組を診察します。僕は下の問診票を使って診察します。問診票に沿って診察していくと、悪い結果を生んだ悪い仕組の全貌が明らかになります。あとは簡単です。仮設定した目的を実現させるよい仕組に必要なことを特定できれば、課題が特定されます。
課題の問診票
●市場は伸びている/減っている?
●ブランド(商品)の売上は伸びている/減っている?
●市場のターゲットはどんな人?
●ブランド(商品)のターゲットはどんな人?
●ブランド(商品)の機能的/情緒的/価格的ベネフィット※は理解されている?
●販売チャネルは増えている/減っている?
●ブランド(商品)は認知されている?
●コミュニケーションしているメディアの種類は?
●コミュニケーション回数・頻度は増えている/減っている?
③企画のターゲットを設定
ターゲティングの手法も様々なものがありますが、僕が使うのは6種に分類したものです。「多いな」と感じる場合には新客層、見込客層、顧客層、ファン層の4つで診察してください(図表1)。この中からクライアントの想定ターゲットを特定して、与件とします。
④企画の実施時期を設定
⑤予算の設定
この④と⑤は簡単です。多くのケースでクライアントから共有されます。それをそのまま与件とします。共有されない場合、クライアントに聞く。もしくは言語化された情報から推測しましょう。
⑥想定コミュニケーションモデルの設定
コミュニケーションモデルとは、「カスタマージャーニー」と「4種類のメディア」で各施策をマッピングして俯瞰で観察するツールです(図表2)。
クライアントの想定コミュニケーションモデルを明確にして、与件とします。
⑦目的の再設定
①で仮設定した目的を再設定します。経験上、仮設定した目的の解像度を上げるケースが多いです。
以上が与件・課題の整理、目的の設定のプロセスになります。
よりイメージしやすいように、例を用いて再現したい、と思います。例としてクライアントから下記のような相談がありました。
【相談内容】
SNS上における「#ブランド名」の投稿数が少ない。商品を無料提供するので、インフルエンサーに投稿してもらいたい。
このケースでは顕在化した症状だけでなく、クライアントの自己診察に基づく企画まで提示されています。ひとまず企画は置いておき、言語化された情報をベースに「現状の仕組」を診察してクライアント要望を組み立てます。
①企画の目的を仮設定
ひとまず言語化されている「SNSで#ブランド名の投稿を増やす」で仮設定します。
②課題の特定
悪い結果(=#ブランド名の投稿が少ない)を生んだ現状の悪い仕組を...