小売企業であるウォルマートや、マツモトキヨシ、ヤマダデンキなどが自社保有のデータを活かしている。メディア活用にとって重要となるデータの動向について、本間氏に話を聞いた。
リテールマーケティングの歴史
──小売のデータ活用が進んでいます。どのように捉えていますか。
小売の歴史からいうと、昔に行っていた方向に戻っているといえるかもしれません。現在の大量消費型のリテールマーケティングは、1960年以降に生み出されました。その時代はスーパーマーケットが主流であり、ダイエー創業者の中内功さんなどが広げたマーケティング戦略によって、他店よりも大量に売ることを効率的に行ってきました。
しかし、戦前、江戸時代のマーケティングは個人帳簿型で、データを活用したCRM型のマーケティングだったと言えます。大量販売型の終わりが見えてきた今、ID-POSによって誰が何を買ったのかをデータとして取得できるようになっています。これは新しいことをやっているわけではなく、過去に行ってきたCRM型と大量消費型のやり方が統合されようとしていると考えられます。
小売はデータを活用して、新しい日本型の小売マーケティングをつくりだしていくよい機会だと思いますね。
──メーカー側はどのように対応すればよいでしょうか。
メーカーは自分たちをBtoCだと思っていましたが、本当はBtoBtoC事業者ということを認識してきたと思います。西友、イトーヨーカドーなどといった、小売に訪れるお客さんのことを知っている気でいましたが、自社の商品が関わっている部分だけを把握していて、その生活全体を理解できていませんでした。
小売には一つのカテゴリーだけではない生活者のデータが集まっています。そのため、PB(プライベートブランド)はすごく価値がある取り組みだと思います。私は花王にいたのでメーカー側でしたが、小売のPBこそNB(ナショナルブランド)ではないかと感じています。顧客と直に接している小売が、顧客を思い浮かべてつくっているはずですから。
そうなると、メーカーに求められることは、全国一律の最大公約数的な生活者理解からの脱却です。例えば日本市場が成熟している今、ローカライゼーションが重要になってきたといえます。スーパーマーケットで、全国一律のオペレーションを行っているようなところは多くないと思います。それぞれの地域性に合わせた運営を行っています。メーカーもエリアマーケティングを本気でやらないといけないようになっていて、それに耐えうるデータが必要になってきています。
データを活用して需要を生み出す
──そのように変化している中、販促活動はどのように考えればよいでしょうか。
現状、他社のブランドから乗り換えてもらうための...