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REPORT

消費者を惑わすサイト設計「ダークパターン」とは?

仲野佑希(UXライター/ダークパターンアナリスト)

消費者、ユーザーをだます行為は、世界的に問題視され始めている。Webサイトで行われている「ダークパターン」もそのひとつだ。UXライターの筆者が、具体例とともに解説する。

「一度きりの買い物のつもりが、定期購入に」「知らぬうちに大量のメールマガジンに登録されていた」。

消費者のスキを突いて、余計なお金を使わせたり、個人情報を差し出すように仕向けたりするオンライン上の手法「ダークパターン」が問題視されています。

2021年3月、日本経済新聞社が公表した調査によると、主要な通販サイトや宿泊予約サービス100社のうち、なんと6割でダークパターンの使用が認められました。サービスの解約方法を電話連絡に限定する、メールマガジンの「受信に同意」のチェックボックスを初期設定でオンにするなどもダークパターンの一例です。

オフラインの商取引においても、例えば大手携帯キャリアの料金プランがわかりづらいことなどは幾度となく指摘されてきました。対面のセールスにおける欺瞞的な行為は「顧客担当者にどのように説明されたか」「いくら支払ったか」を消費者が覚えているケースが多いため、不満の声が上がりやすいといえます。しかし、その「オンライン版」であるダークパターンは、心理学的なアプローチを巧妙に取り入れており、消費者は簡単に気がつくことができません。「自分がよく確認しなかったから」と考えてしまう人も多いのです。

昨年、アメリカの大学の研究者らが、数百万人が利用するチケット販売サイト、スタブハブ(StubHub)で、大規模なA/Bテストを行いました。チケットの手数料を隠し、決済時になって初めて支払総額を表示するダークパターン「ドリッププライシング」が、どれほど効果があるのかを検証したのです。その結果、顧客に対し決済直前まで手数料を隠した方が、そうでない場合に比べて21%も多くチケットが購入されることがわかりました。

消費者の利便性を無視し、取引に「不誠実なやり方」を持ち込めば、企業は簡単に利益を手にできてしまいます。ダークパターンがなくならないのは、このためです。現在、欧米では法整備を急速に進めているほか、日本においても、消費者庁が特定商取引法の改正に向けた取り組みを始めています。今後、Eコマース業界においてダークパターンをめぐる議論が高まることは間違いありません。

私たち企業が、承諾誘導の心理技術をマーケティングに利用するとき、どこまでが「セールステクニック」として許されるでしょうか。そして、どこからが「ダークパターン」になり得るのでしょうか。これらの倫理的な問題を考えるきっかけとして、次の3つの...

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